銀魂1
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銀時は焦っていた。
なんせ、昨日まで仲良かった奴らが…
「よっしゃー!俺ストライクー♪」
「ちぇっ…100円までだからなぁ奢るの!」
「え、低くね??」
罵っては空き缶を投げ、靴箱には泥や虫。
きらきらしていたはずの生活がかわってしまった。
理由は分からない。
誰も教えてくれない。
誰も…自分の話など、聞こうとしない。
「…………」
銀時は、次の授業に備えてカバンから教科書を出した。
これは何かの間違いだ。
急に友達の態度が変わってしまうなんて、そんな漫画みたいな事…。
それにこの際無視しておけば、納まるだろう……そんな甘い考えは無情にも切り捨てられる。
「………ぁ……」
“日本史”と書かれたその教科書は、荒々しく切られたり、破かれたりしていた。
使い物にならないほどに。
誰がこんな事───…
銀時は、クラスのやつらをキッと睨み付けた。
その視線に気付いたのか、教室は静かになる。
「なぁオイ…誰がこんな真似…」
「黙っててくれるかな」
沈黙を破ったのは、クラスの学級長だった。
「なんだい、その視線?ひゃはははは、言ったろう?君の味方は、誰一人としていないとね!」
ふひひひひひひと下種な笑いをあげながら、俺を押さえ付けてくる。
「な……にをっ?!」
やがて数人の男子生徒が銀時の周りを囲み、下腹部を蹴った。
「かはっ」
腹の中でぐるぐると駆け巡るナニカ。
吐き気がする、気持ち悪い。
「あーれれぇ?避けないんだぁ?」
こんなに囲まれておいて避けれるわけないだろ、という言葉は拳にかき消された。
一人の男が、今度はバキッという音と共に、頬を殴りつける。
鉄の味がする。
苦い鉄の味がする。
「やめ…ろぉ…」
散々蹴られた挙げ句、俺は用済みと言わんばかりに床に放置された。
ヒューヒューと息が定まらない。
意識が朦朧としてる。
ぐわんぐわんと、教室が回っている。
聞こえてくるのは、下品な笑い声と教師の声。
『なんですかあのゴミは…??授業の妨げになりますね…』
『はいはーい!センセ、俺が燃えるゴミに出しとくから大丈夫ッスよ!』
そんな、会話。
そんな非道なやつらの、会話。
「あり…え……ね…」
実は、少しだけ期待してた。
先生が見たら、怒ってくれるんじゃないかって。
大人だけは、もしかしたら味方かもって。
「はーい、じゃあ授業始めますよーっ」
まるで俺の事なんか見えていない。
俺の価値は、きっとそこに丸まっている用済みのテスト用紙以下なのだろう。
本当、俺が何をしたっていうんだろう…
―――――助けてほしかったら、早く俺を思い出せ。
早く・・・。
蔑んだ教室に、俺だけに、誰かの声が聞こえた気がした。