銀魂1

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「なっ……ぎん、とき?」



無表情。
まるで生きた屍のような顔の銀時が、そこにはいた。


綺麗な光が宿っていた紅い瞳も、
逆光で輝く銀髪も、
何もかもが、


“無”に染まっていた…。




「銀時!!!お前、何して…………ぁ……?」









ドスッ、と何かが下腹部に刺さり、生ぬるい血が溢れて理解した。




────刺された…?





「がはっ…」




刺さっていた小刀を目の前の銀髪は無情にも抜きさり、矛先を神楽に合わせた。


土方は、力を振り絞って銀髪の腕を掴んだ。


絡み合う冷たい視線。


ソイツは、銀時なんかじゃない。




あいつは、こんな表情なんてしないから。

やさしくて、馬鹿で、無邪気で、あったかくて。

全てを包み込んでくれるような笑顔。

困ってるやつがいたら、敵であろうと助けてやる…そんな、銀時は…居なかった。



「……離せ」


「むり…だ、」


「気持ち悪い……気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!触るな!!!!!」



そう叫びながら、小刀を振り回す銀髪を、抱き締めた。




「ぐ……っくぅ……っ!」





別の箇所にまた小刀が刺さる。

吐きそうな痛みが土方を襲った。




だけど、いい。
別に、いい。



「離っ「銀時…おねが、だから……戻ってこいよ…」……」




更に抱き締める力を強めた。

その勢いで小刀が奥深くへと沈んでいく。





「銀時……銀時っ…皆お前を待ってる。だか、ら。帰って…こいよ…!!」










「…………ァ……………………







ヒジカタ…?」










ヒジカタ、確かにそう言った。

良かった。まだ理性は全部持っていかれていない。



恐らく、誰かが銀時の事を──…












「ねぇ。何してるの?俺のお侍さんに触らないでよ。



…ほら、銀時。早く、その男の事殺しちゃってよ」














戻りかけていた銀時の表情が、また初めに戻ってしまった。



「ぎん」


「離せ!!!触るな…その汚い手で触るな…」


「銀時」


「お前なんか、殺……………」





ぽたたっ





また血が滴る。
だが土方は気にしない。





「お前………なんで」




銀時が驚愕した表情を浮かべた。




「なんで…??そんなの…お前の痛みに比べたらなんともない」





「馬鹿じゃ…ねぇの、お前。…本当に……お前ってやつは…なんで…なんでだよぉ…!!!!!」



「ぎ…と、き…?」



「…さっき一度、理性が戻ってきたんだ。お前を…お前を殺したくない…お前が俺を忘れるように…こんな事したのに…!!なんで、お前は…っ」




銀時は、目尻に涙をいっぱいためてわんわん泣いた。


俺が銀時を嫌いになる?
俺が銀時を忘れる?




そんなの………




「お前を…忘れられるわけ、ないだろ?」





今の俺は死にそうで、滅茶苦茶格好わるいけど。






「土方ぁ………帰っても、いいの…?」




「何言ってんだ。馬鹿……帰るぞ」



お前の事が好きなんだ。















「あらら〜愛の力って凄いんだねぇ、阿伏兎」


「いいのか団長?せっかく拾ったのに返しちまって」


「うん。あのね阿伏兎、俺…試してみたくなっちゃった」


「はぁ??何をだ??」


「本当にあの二人の愛は本物かどうかを、ね。楽しみだなぁ」












そうして、銀時は帰ってきた。

今では、もう白夜叉が覚醒するなんてことはなく、毎日平凡に暮らしている。



「普通って…幸せだな、土方」


「そーだな」


「腹の傷…ごめんな。




それと、ありがとう」






お前のそんな笑顔がみれるんなら、






「ああ…おかえり、銀時」






俺はもう、何もいらない。

お前も…そうだろ?

ずっとずっと、愛してる。
絶対言ってやらないけど、俺は銀時の頭を優しく撫でた。


END


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