銀魂1

□evidence
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貴方たちに、この言葉を贈ります──…。













血の雨に濡れながら、男は笑った。
この戦いに何か意味はあるのか、と。
命を無駄にしているだけではないのか?
この戦はきっと終わらない。
そう、仲間が皆死ぬまでは。
だったら、俺はどうしたらいい?
どうすれば救える?
別に世界を救おうなんて、大それた事は思っていない。
けど、
目の前にある大事なものくらいは、自分の手で護りたいんだ。
易々と死んでいく仲間たちの骸を見下ろしながら、その鬼は泣いた。



──自分は、無力だ。











「おい、銀時」

木にもたれてぼーっとしていると、高杉にこづかれた。

「んー、なんだチビ杉か」

目をこすりながら欠伸をすると、また高杉にこづかれた。

「殺すぞクソ天パ!って違ェよ…話がある」

高杉は銀時の手をひくと、雑木林の方へ歩きだした。なんて急なやつだ。

「ちょ、何処行くんだよ」

「るせー。いいから黙ってついてこい」

銀時が言うと、高杉は早足でずんずん進んでいった。
一体何処に?

それから5分ほど、二人は無言で歩いていた。
やっぱり、高杉の考えは分からない。
昔から、人とはどこか違った印象を持っていたけど、根は優しいやつだ。
時には冷酷だけど、それは高杉流の優しさに過ぎなかった。

「…着いた」

と、高杉が足を止めた。
銀時はその衝撃で少しよろつきながら、前を向いた。
そこには──…

「…小屋?」

そう、小屋があったのだ。
かなり年期も古いであろう感じが漂っている小屋で、木で出来ている。
錆びれているし、何よりボロボロで今すぐにでも崩れそうだった。
ここに何の用が?

「ここに、とある書物が置いてあった」

沈黙を破ったのは高杉だった。

「書物?何の?」

銀時は頭上に?を浮かべながら、その小屋のドアノブに手をかけた。
ギィ、と音を立ててドアが開いていく。
高杉は、その銀時の様子をただ黙って見ているだけだった。

そうして、ドアは開いた。



「────ッ!」



言葉が、出なかった。
身体が震えて、心臓が高鳴る。
ドクンドクンという心音と共に、汗が噴き出した。
間違いない、間違えるはずがない…。
銀時は、恐る恐るテーブルに積み重ねてあった書物に手を伸ばした。


「…松陽…先生…?」


紛れもなく、松陽が書いた書物の数々だった。

「な、何で…」

銀時は困惑した。
数年前、天人が襲来して、寺子屋は炎に包まれた。
真っ赤な真っ赤な、死の炎に。
幸い、塾生は外に出ていて死人は出なかった。

ただ、松陽先生だけが。
松陽先生だけが、中に残っていた。

『松陽先生ぇぇぇーっ!!!!!!!!!!!』

勿論、助からなかった。
松陽は、有名な書物をいくつも手懸けていた。
その仕事場が、まさか、ここ?



「──…っ」



涙が、流れた。
銀時は書物を手に抱きながら、ポロポロと泣き出した。
身体中から感情が溢れだして、止まらない。

「ひ…っうっ…」

ぎゅぅ、と身体を自分の身体を抱き締めた。

「…銀時、松陽先生が生きた証が、ここにあったんだ」

──そうか。
それを教えるために、つれてきてくれたのか。

「最近のお前は、正直見ててイライラすっからな。陽気なふりして、夜中一人で泣いてんだろうが」

高杉は、素っ気ない顔をして、俺の頭に手をおいた。
ああ、見られてたんだ…。

「泣くんじゃねェよ。松陽先生に顔向けできねーだろ」

頭にのせた手を、わしゃわしゃと動かして、撫でてくれた。

「うわ、天パがっ」

「天パが、じゃねェよ!分かったか!元気出せこのクソ天パ!」

なんかもう喧嘩になっていた。
銀時は、高杉を殴りながらも、元気を貰っていた。
嬉しい。

「やっぱテメーは嫌いだ、バカ杉」

「フン、そのわりには、すげェ笑顔だな。」



───やっぱりお前は、笑った顔が一番だよ。

銀時は、根っからの笑顔で笑った。











貴方たちに、この言葉を贈ります──…




『 』



END


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