銀魂1
□ずっとずっと、傍にいて
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ひらりと舞うは小さな命。
紅の花弁はやがて土に還り消えていく。
手のひらに乗せた花弁は、いつの間にか擦り抜けて泡となる。
やがて、主は何も背負わずに一人で歩きだした。
孤独と戦いながら、それでも生き続けた。
護るモノは何も無くても、ただ、自分自身のために
…修羅の道を歩いた──…。
攘夷戦争末期。
侍達は刀を捨て、生気を無くしていた。
圧倒的な戦力。
膨大な人数。
天人に勝てるものは、最早何も無かった。
人々が絶望だけを予測していた真っ只中…。
未だ魂の折れぬ、4つの光があった。
一人は鋭い瞳で戦場を圧迫し…
一人は的確な指揮でその場を防ぎ…
一人は宇宙に行く事を願いながら…
一人は銀髪と紅を煌めかせながら、戦場を駆った。
───名を、白夜叉。
「金時ー」
「銀時っつってんだろーが…」
銀時は呆れながら溜め息をつくと、坂本が肩に飛び付いてきた。
「うわ!なんだよ…っこのバカ本!」
肩にしがみつく坂本をべしべしと叩いてみるが、どうやら動く気はないようだ。
重い…!!
「わしは思うんだがな…」
「無視かよ?!」
普通にスルーかよ!
つか重い!
馬鹿!!!
「おんしは…この戦が終わったら何処に行くんじゃ?」
…は?
「………」
考えたことも無かった。
否、それ以前に戦が終わるなんて事思っても居なかった。
その前に、俺はきっと死んでるし。
「……金時?」
「そーさな…俺は戦が終わったら普通の生活をしてェな」
「…普通の生活って具体的にどんな感じがか?」
「…可愛い嫁さんもらって、子供産んで、父親になって………でも、無理だよな、そんなの」
銀時は静かに天を仰いだ。
坂本はそれをただひたすら見つめている。
「……終わりなんて、ねェよ」
声の主に坂本と銀時は一緒に振り向く。
立っていたのは、高杉だった。
「高杉…」
「松陽先生が苦しんだ分以上に奴らには苦しんでもらう。死んでも肉片が残らないように切り刻む。だから…それまでは終われねェよ」
高杉はそれだけ言い残すと、背を向けてどこかへ行ってしまった。
体に染み付いた血の匂い。
変えることの出来ない過去。
例え戦争が終わっても、俺たちはそれに一緒囚われ続けるんだろうな…。
「…もし、」
銀時が言葉を紡いでいく。
「もしも…戦争なんて無かったら。普通に暮らして…幸せ掴み取って…汚れた世界なんて見もしないで…大事な奴だって、傍にいて、」
「…そうじゃな。、金時」
坂本は銀時の揺らぐ瞳を真っ直ぐに見て笑顔でこう言った。
「金時とわしが出会えたのも、今までの過程があったからじゃき。プラス思考ぜよ!」
あっはっはーと無邪気に笑う坂本を見て、銀時も心が和らいだ。
──不思議だ、こいつといると自然に心が軽くなる気がする…。
「それに、金時はわしがお嫁さんにもらうから心配せんでもよか!」
「バカ」
「照れとんのか?」
「違ェよ」
「泣いとんのか?」
「目から汗が出てるだけだ」
「…まぁ、そういう事にしちゃるぜよ」
「うるせェな…」
俺、おまえとなら生きていける気がするんだ。
だから…ずっと…
「傍にいねェと、許さねェからなバカ本」
END