銀魂1

□来年もこの場所で
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「おい、銀時。まだか・・・」

「ちょ、ちょっとタンマァァァ!!まだ着替えてるっ」

今日は歌舞伎町で行われるお祭りの当日。

万事屋の子供たちと俺と土方とで行く予定だったのだが、子供たちは俺たちを気遣ってくれて、沖田くんを保護者に行くことになったのだ。

つまり、二人で楽しんで来い、ってわけだ。

そこで早速万事屋に行ったのだが、銀時の着替えがなかなか終わらなくて玄関で待つ始末。

いつもの羽織と黒い服だけなのに、どうしてこんなに時間が掛かるのだろうか。

文句をブツブツと呟いていると、万事屋の玄関が開いて、銀時がおずおずと出てくる。

「!」

銀時の格好は普段と違って、淡い水色で描かれた蓮井の花の着物を着ていた。

すごく綺麗で美しい、と土方は思った。

一方銀時は、慣れない格好に頬を染め、ドアに身を隠しながら土方を見ていた。

・・・可愛い・・・・。

「な、銀時」

「ん・・・な、なんだよ」

「綺麗だぜ」

「!!」

素直にそう言ってやると、また頬を染めてから俯いてしまった。

馬鹿、そんな仕草も可愛いんだよ、逆効果なんだよ。

本当、お前は俺を煽る天才だな。

「馬鹿土方・・・早く祭り行くぞ・・・っ」

半ば無理やり俺の手を引っ張ってから、外へと出た。

やがて会場に着き、銀時は手を放す。

「馬鹿、繋いだまんまでいいだろーが、夜なんだし、見えねぇよ」

「うぅ・・・でも、は・・・・」

「は?」

「恥ずかしい・・・もん・・・」

銀時は土方の着物の裾をぎゅぅっと握って顔を真っ赤にした。

なんだか、今日はこればっかりだ。

・・・まぁ、可愛いからいいんだけど。

もう少し大胆でも、と思って自分から銀時の手をとる。

「なっ!ちょ・・・!」

「お前、すぐはぐれるだろ。だからこうしてろ」

「っ・・・・///」

繋いだ手に、伝わる体温に、また銀時の熱も上がっていく。

・・・温かい。

土方の手はおっきくて、同じ男の手なのに、やけにがっちりしてて硬い。

「・・・あったかい」

土方に聞こえないように、小さな声で呟いた。

すると土方は、屋台の方に指を向けてから、

「綿菓子とか、食わねぇのか?」

「へ?」

「奢ってやる」

「おぉ・・・!土方くん男前・・!!」

「当たり前だろ」

褒められて鼻の下を伸ばす土方に、笑いが零れて。

土方が買ってくれた綿菓子をはむはむと啄ばむ様に食べる。

「甘いィィィ・・・!!」

「そりゃあな。砂糖だし」

もっともな意見を返してくる土方をキッと睨み、再び綿菓子を食べる。

その様子を見ていた土方は

(銀時の髪と綿菓子・・・似すぎてる・・・!)

新たな発見をしたのであった。

「なーなー土方ぁーチョコバナナ食べたいな・・」

銀時いわく、「いざとなったら煌く瞳」攻撃で俺に視線を向ける。

「うっ・・・わ、分かったから・・・待ってろ」

俺は会計を済ませてチョコバナナを銀時の元に持っていった。

わーい、土方くん大好き!と喜ぶ銀時を見ると、ついつい顔が歪んで、買って良かったという気持ちが芽生える。

ぺろっ

「!!」

銀時がチョコバナナをぺろぺろと舐め始めた。

その次に、口に含んではむはむと・・・。

「・・・・・・・・・」

何だ、この気持ちは。

別にいいじゃねぇかチョコバナナ食べてても。

べ、別に何も考えてないし・・・。

エロいとか、そんなん思ってないからな!絶対!!

とは言っても、やはり視線はそこにいってしまって。

こいつは天然で食ってんのか・・・?!それとも計算済み?!

いやいやいやいや・・・アイツはそんな面倒な事しない。

ということは、天然、だと・・・。

まぁ、存在自体がヤバい銀時だ。

それにチョコバナナって、凄い兵器だな・・・。

そんな事を思いながら、美味しそうに食べる銀時を見つめていた。

「銀時、そろそろ花火、上がるらしいぞ」

「ふぇっ?」

「見に行くぞ」

また手を握って穴場へと駆け出す。

昔総悟達と見つけた、最高の穴場だ。

着いたと同時に花火が上がって夜空を綺麗に染めた。

「・・花火って、儚いよな」

銀時が突然、そんな事を言い出した。

「何でだ?」

「開いたときは凄く綺麗なのに、すぐに散って灰になる…なんか、可愛そうじゃん」

「・・・そうか」

土方は煙草とライターを取り出して、火をつけた。

「・・・・・・俺」

「?」

「昔、戦争中に夜空に光る一つのものを見たんだ。今考えれば花火だって分かるんだけど・・・すごく綺麗だった。一人で見てて、なんか悲しい気持ちになって・・・」

横を向くと、銀時の目からは涙が溢れ出していて。

驚いて目を見開く。

目じりに溜まった涙を指で拭って、一息つかせた。

「今は二人で見れて、嬉しい。お前が居るから・・・嬉しい」

銀時には、なにやら触れてはいけない過去があるらしい。

それは恋人の俺でも聞いたことが無い、悲しい過去。

勿論、聞き出そうなどとは思っていない。

だけど、度々見せる悲しい顔や家族が居ないことから、大体どんな生活を送っていたかは想像がつく。

だから、昔の分も俺が埋めてやろうって、決めたんだ。

一生護る。絶対に。

「ね、土方。ずっとずっと、傍に居てね」

この銀色が壊れてしまわないように、ゆっくり優しく、護っていく。






END

 

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