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□ハッピーバースデー土方くん!
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「トシ!誕生日おめでとう!!」

「ああ、ありがとうな近藤さん」

「おめでとうございやす土方さん、今年こそ俺が抹殺しやす」

「うっせぇよ総悟!人が誕生日だっつーのに…」

「おめでとうございます副長〜!」

「ってミントンしてねェで仕事しろや山崎ィィ!!」

廊下で隊士と擦れ違うたびに各々が誕生日を祝ってくれる。

5月5日、自分でも忘れていたが、誕生日なのだ。

近藤さんが有給をとってくれたのも、誕生日だからだろう。

俺は正直、記念日とかの類いはどうでもいい…というか、特に祝ったりはしない。

昔から剣の事しか頭になくて、大人になれば副長としての仕事が溜まり…誕生日なんか気にしている暇もなかった。

でも今年は、今年からは、一緒に祝いたい相手がいる。

俺は近藤さんに感謝しながら、歌舞伎町へと足を進めていった。




そう、愛しい銀色に会いに行くために。





















──ピンポーン

「…あれ?」

──ピンポーン

「………」

いつもなら誰かしら玄関から出てくるはずなのに、誰も居ない。

何度インターフォンを押しても人が出てくる様子は無かった。

まさか…俺が来ることを忘れてた、とか…?

いやいや、そんなはずは…。

確かこの前、銀時は言ったはずだ。

「誕生日の日はウチに来い、しょうがないから祝ってやるよ」って…。

なのに何で、誰も居ない?

「…銀時」

お前は忘れてしまったのか?

お前にとって俺はそんなちっぽけな存在だったのかよ。

土方は苦笑いを浮かべると、そのまま万事屋の玄関の前でうなだれた。





















銀時side

今日は土方の誕生日だ。

居酒屋でこの前会った時に、祝ってやる!なんて事を言った気がする。

しょうがないから、銀さんが直々に祝ってやろう。

多分、土方は誕生日なんざ関係なく大量の書類を相手にしている事だろう。

だったら、ウチに来るのは夜になるな…。

「神楽!新八!」

銀時が叫ぶと、二人はくるっと首を向けた。

「何スか??」

「今日はちょっと依頼が入っててな…子供が聞くような話じゃねェから、今日は妙の家に泊まってこい。神楽もな」

しれっと嘘をついた銀時だったが、神楽はそれを見逃さなかった。

「分かったヨ。そーゆー事にしといてやるアル」

神楽はニヤニヤと笑いながら近寄ってきた。

「な、なんだよ」

銀時がたじろぐと、少女はにぃっと笑った。

「今日はマヨラの誕生日アル、総悟が言ってたヨ。…銀ちゃん、お風呂には入ってた方がいいアルヨ」

「なっ!」

カァァ、と赤くなっているであろう俺の顔。

それを神楽はツンツンつついた。

「ヨシ、新八!行くアルヨ!定春もこんな家に居たら目が腐るアル」

神楽は定春を引きつれて、万事屋から出ていった。

「……マジかよ」

バレてんじゃんかァァ!!!

ぜってー沖田くんわざとだ…今度4分の3殺そう、マジで。

…じゃあ、俺も誕生日プレゼントとやらを買いに行くか。

















「うわぁぁ…っ」

新しくできた雑貨屋。

そのとあるコーナーに並ぶ色んなライター。

可愛いものからカッコいいものまで、種類な多種多様だ。

土方は…カッコいいライターの方がいいよな?

そう思って、悩むこと一時間。

「おっ!これカッケェ…!!」

目に入ったのは、銀と黒のシンプルかつ高級そうなライター。

これを見て、これしかないと思った。

「さりげなく銀色が混じってんのは内緒にしとこう…」

なんだか気恥ずかしくなった俺は、ふるふると首をふって、それをレジに持っていった。

「6030円になります」

ニコニコとレジのお姉さんは笑ってるが、そんな事はどうでもいい!!

高っ!!!!!!!

ライターって…おま、高ァァァ!!!!

「お客様、お会計は…」

「あっ、え、ハイハイ…」

ライターは高かったけど、俺の決心は鈍らなかった。

誕生日のために甘味我慢して、依頼もきっちりこなしたんだ。

これくらい惜しくない。

「ありがとうございましたーっ」

店員さんの声をバックに、銀時は店を後にした。























土方side

誰かの声が聞こえる。

お前は…誰だ…?

「土方!!」

「っ!」

驚いた、辺りはもう夕焼けに包まれている。

それより驚いたのは…目の前に銀時がいることだ。

俺は…ああそうか、あのまま寝ちまったんだっけ…?

「土方…いつから居たんだよ?!風邪引くだろ!」

銀時は、とりあえず中に入れ、と言いながら俺を万事屋の中へと連れ込んだ。

「…それで、お前は勘違いしてた、と?」

銀時が苦笑いを浮かべながらお茶を啜った。

「勘違いっていうか…お前、俺の誕生日忘れてたんだろーが…」

「はぁ?!おまっ…俺はお前が仕事で夜に来るだろうと思って誕生日プレゼント買いに行って……あ」

しまった、と銀時は口を閉じる。

それに気付いたのか、先ほどの空気とはうってかわって、土方はニヤリと笑みを浮かべた。

「そーかそーか…愛されてんなァ、俺」

「ち、違…自惚れんなバカァァ!!」

「俺はお前のそんなとこも好きだぞ」

「ぐっ…も…本当、お前…ばかやろ…」

銀時はハァ、とため息を吐くと、小さな箱を取り出した。





コト、と音をたてて机におく。

「ん」

それ開けろ、と言わんばかりの目付きで土方に合図した。

土方は黙ってその箱を手に取ると、シュルシュルとリボンを外す。

「うぉっ…!」

土方はそのライターを見るなり、歓声をあげた。

銀と黒のそのライターを土方はじっと見つめた。

やがて、ライターを手にとってから銀時に微笑みかける。

「これ…俺とお前みてェで、すっげェ気に入った…ありがとな」

「いや…俺はお前みたいに金もないし高価なモンは買えねェけど…そのライターは、なんか気に入ってさ」

銀時が笑うと、土方は席を立つ。

「隣、いいか?」

「おぅ」

すると、隣に座るなり土方は銀時にキスをした。

何度も角度を変えて、ついばむような甘いキス。

それが心地よくて、銀時は土方の服をきゅっと掴んだ。

「はぁっ…」

唇が離れると、二人の間にできる銀色の糸。

銀時はぽすっと土方の胸に倒れこんだ。

「銀時、あといっこだけ…プレゼント、頼んでもいいか?」

「ん…何?」








「ずっと一緒に居てくれ」








夕日と土方が重なって、キラキラしてる。

お互い笑い合うと、二人はまた甘い甘いキスをした。

END


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