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□護りたいモノ
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「銀時。ぎーんとき」
寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている銀時の頬をぺちぺちと叩いた。
このまま、可愛い寝顔を見つめていたい・・・。
いっそ、食べちまいてェ・・・。
だけど、時刻はすでに午後の一時。
土方は朝の八時に目が覚めたので、煙草を買うついでに軽い散歩に行ったりしたのだが・・・。
「ぐごごごー・・・ぐぅー・・・」
帰ってきても、起きる気配がしない。
昨日の夜、いつもより激しくしすぎたせいか、銀時の目は腫れている。
泣いて、声にならない叫びをあげて、銀時は失神したのだから。
・・・無理もない。
「・・・俺も反省しねェと・・・」
土方は、一人ポツンと呟く。
俺は・・・本当に、最低な奴だと思う。
そのくらい、前から自覚していた事だ。
だけど・・・
「・・・銀時」
本当に愛している人を傷つけて、思いのままに抱いた。
抱いてしまった。
昨日、仕事で攘夷志士のやつらを何人か斬って、後処理や残った仕事・・・それにイラついて、銀時を壊れるくらいに抱いた。
それでも銀時は笑顔で受け止めて、抱きしめてくれた・・・。
その優しさに、また俺は甘えてしまったんだ。
「・・・ん・・・ひじかた・・・」
イキナリの声に土方はビクッと反応する。
「銀時か・・・おはよう」
「ん、おはよ」
銀時は目をごしごしと擦ると、ある一点に目をやった。
「・・・土方、ソレ」
俺の体にある、無数の傷を指さした。
「昨日は暗くて気付かなかったけど・・・また、怪我したのか・・・?」
銀時が不安そうな表情で見つめる。
「いや、大丈夫だ。ちょっと掠っただけだしな」
土方は、笑って見せた。
「そっか・・・」
銀時は安堵した表情を見せると、
「土方は、死ねる?」
思いがけない一言だった。
一体何を言うかと思ったら・・・。
「・・・は?どういう意味・・・」
銀時は、いつになく真剣な顔をしている。
でもどこか、寂しげな表情で・・・。
「真選組のために・・・お前は死ねる?」
今にも途切れそうな声で問いかける銀時の表情は読めない。
だけど、泣いている。
静かに、泣いている。
「・・・俺は、いつでも死ぬ覚悟はできてるよ」
土方は有無を言わせぬような声色で言った。
この傷を見て何を思ったか、
お前は何を想像したか、それは分からない。
だけど・・・
「死ぬつもりなんてねェ。お前の為にも、俺は精いっぱい生きる。生きるよ」
土方が笑うと、銀時がふわっと微笑んだ。
「うん。・・・ね、土方、もっかい寝よ?」
俺は、頷いた。
「・・・が・・・るから・・・」
「・・・?」
「俺が・・・護ってやるから・・・」
「・・・」
ほら見ろ。
お前もお前と変わんねェ。
この背中の傷、顔の傷、腕の傷、腹の傷・・・。
俺がきずいてないとでも言うつもりなのだろうか。
お前も・・・色んなもん背負ってる。
自分が傷ついてでも、護りたいもの。
「・・・く・・・」
結構、しんどかった。
銀時の体を見れば見るほど、色んなもんが見えてくる。
白く細いその体に、引き立つような傷。
俺も・・・お前を・・・
「・・・護れたらいいのにな・・・」
土方は、複雑な気持ちで再び布団へと身をうずめていった。
END