ぎぶあんどていく
□気にくわない
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「おい八雲」
「おーい…」
「…」
気にくわない。
当たり前のように事件を持ち込む後藤さんも
それを結局は解決してしまう自分も
後藤さんに付き合わされびくびくしながら来る石井さんも
そして何より
そんな石井さんと楽しげに話すあいつが気にくわない。
「え!?晴香ちゃんも見たんですか昨日の超能力伝記!」
「石井さんもですか?凄かったですよね!!椅子が宙に浮いたりとか」
「あとはありきたりですがスプーン曲げとか。私も試みたのですが残念ながら曲がりませんでした…」
「私も。ちょっとくらいなら曲がるかなって思ったんですけどね」
照れたように笑う君が気にくわない。
第一、超能力なんてマジックと変わらないだろ。
種も仕掛けもあるんだよ。
そんなものの話の何がそんなに楽しいのかまるで理解できない。
イライラする。
「八雲!!てめえ無視もいい加減にしやがれ!」
「煩いです後藤さん。無視されるのが嫌ならここからとっとと出てってください!石井さんも連れて、ほら早く!!」
事件がなんだ。
僕からしたらあいつが僕以外の男と親しげに話してることの方が大事件だ。
「ちょ、待て八雲!!悪かったって!」
「いいから早く出てってください」
自分でもこんな地を這うような声に驚く。
でも今さらどうしようもないんだ。
「あーったく!石井、帰るぞ」
「え?もうですか?」
「いいから早くしやがれ!」
後藤さんの拳が石井さんの頭めがけて落ちていく。
痛がる石井さんを見ても何も感じない冷めた自分に失笑。
バタンと騒々しい音をたてつつ、やっとあいつと二人きりになれた。
「いいの?事件の協力しなくて」
それどころじゃなくさせたのは君だろ。
喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
「あれ?八雲君もしかして怒ってる?何かあった?」
君のせいだ。