他版権物

□秘密のお花ばたけでうたた寝するような、
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彼女は時々故意にやっているのかと疑いたくなるほど無防備になる時がある。今だって。


「ユネ、風邪引くぞ」


むにゃむにゃと微睡む彼女はパリ春の暖かさに気が緩んでしまったのか、客があまりにも来なくて暇だったのか……。薄く開いた口はスースーと静かな寝息を店に溶け込ませる。


「…ったく、コイツは…」


起こさないように少し丁寧に自分の上着を彼女にかけ、頬杖をつきながら夢現の境を漂う愛らしい顔を眺める。
まるで絵本に出てくる眠り姫のようだ、と思った俺は軽く舌打ちした。王子様役は絶対に俺ではないだろう。こんなみすぼらしい格好の王子様はどんなに慈悲深い彼女だって願い下げだ。


「……ク…ロ、ド……さ…ま……」

「……!」


何だ?これは寝言か?
他に思うことはあるのだろうが、真っ先にその言葉が浮かんだ俺は間違いなく王子様にはなれない。恐らくそれに従う下臣でさえ。そうだ、ロマンチックだなんて金の足しになるものか。


「どうした?」

「………。」


声をかけてみると俺の声に反応したように微笑む彼女。もちろん眠ったまま。彼女の口がまた言葉を発そうと開いたのを俺は見逃さなかった。


「……ビズ、し…て……だ……さい」


何故。そう考えるより先に身体が動いた。


「…ん……」


俺は彼女の唇を塞いでいた。目を瞑る彼女の長い睫毛が触れそうになるほど近くにあり、頭がぼうっとする。


ずっとこうしていたい、と思った直後。俺は何故頬ではなく唇に口づけているのだ?と我に返り、慌てて唇を離した。








秘密のお花ばたけでうたた寝するような、







それと同時に魔法から解けられたお姫様は瞼を開き、王子様を真似た男は驚く。




「クロード、さま…?」









Fin,



「ビズ」……親しい間柄同士の挨拶。一般的には頬に口づける。

20110925

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