戦国 BASARA

□魔法がとけて
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「なに?私が嫌いになったの」

「だからそうじゃねぇ。お前は何もわかってねぇ」

「ええ!そうよ!馬鹿で悪い!?」



午前11時半某ファミレスにて。

”お前は俺といて疲れないのか、俺はもう疲れた。”と、政宗は吐き出すように呟いた。


私がこんなに声を荒げたのは約二年ぶりのことだ。ウサギがオオカミを睨むように微々たる威嚇をする私。それに対して政宗はただ微笑で応える。初めてこんなにイライラした。頭に溢れた言葉が口から流れる。



「嫉妬や不安、疑い……私は政宗と釣り合うために何でも我慢したし努力したつもりだよ。それが……何もかも……政宗にとって”重かった”ってこと??」



語尾を荒げる。政宗に聞いているのか自分に言い聞かせているのか。私が悪いのか、政宗が逃げたのか。わからない。思考が頭が、空っぽのままぐるぐるする。



「はは、馬鹿じゃないの私。一人で必死になって、…。ごめん、」



目頭が熱くなった。慌てて窓の外を見る。泣いてるところなんて見られたくなかった。
窓に映ったウエイトレスがセットのデザートを運んで向かってくる。机に置き終わるまでそのまま私達は無言だった。
カラン、と氷が溶けて小気味よい音がした。そうして政宗がやっと口を開いた。



「ホラな、何もわかってねぇ。おい、まず顔こっち向けろ。お前は大事な所で俺から顔を背けるな」

「………」



嫌々ながらも顔を正面に向けた。隻眼は針を刺すように私を捕らえる。
所在無いアイスの表面は既に濡れていた。



「はっきり言う。お前俺といて楽しくないだろ。好かれようと男ウケする型通りの女演じて。楽しい訳ねぇよな。俺は出会った頃のお前がよかった。好きだった」

「……え」

「出会った頃は笑ったり泣いたり怒ったりも全部一緒だった。今じゃそれがカッコ悪いと思うようになった。何故そうなったか分かるか?」

「………!」

「お前にとって俺が”装飾品”になったからだ。どういう意味か分かるよな?」



アイスの表面が少しずつとけて流れる。どんなにとけてもそれは甘いアイスに違いない。けれど私にとってアイスはただ”可愛い”だけでしかなくなった。私の中ではいつからアイスがアイスでなくなってしまったのだろう。












魔法がとけて












時計の針が12時を指し、真実が顔出す。




End




0120702

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