戦国 BASARA
□ドレッサー貨物船
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彼はいつだって私にいいところしか見せない。私は頑張って頑張って血反吐を吐くような努力をして精一杯彼に釣り合うよう背伸びしているのに、彼はそこに平然といる。なのに私にいいところを見せる彼は一流の素材をさらに磨いているようでどんどん遠くなっている気がする。
「どこにも行かないでね、小十郎」
「なに寝ボケた事言ってやがる」
「だって……」
「名無しさん、酒呑み過ぎだ」
酔ってなんかない、と言い返した私は酔っ払いの台詞だと思われてるのだろう。実際、酔ってるのかもしれない。もう、わからない。
「なんか疲れてんのか?」
「うん、私もう疲れたよ」
「……は?」
豆鉄砲を食らったような顔をした小十郎を見て思わず吹きそうになる。
「小十郎に釣り合うように、努力するの」
「釣り合う…?」
「そう。釣り合うようにするの」
「何アホな事言ってんだ」
お酒を一口呑み喉を潤す彼を見て悟った。この人は真剣に考えてくれない。ただの酔っ払いが勢い余って言った言葉ぐらいにしか捉えていない。
「ねえ、私がいなくなったらどうする?」
「名無しさん、もう酒呑むな」
「ねえ、答えて」
「そうだな…」
彼は一瞬遠くを見つめ何か思案する表情を見せると私の手首を掴んだ。
「いなくなる前に名無しさんを離さねぇ」
「……何それ」
「変か?」
「なんか子供っぽい。小十郎にしては可愛い答えだねえ」
「そうか?」
不思議そうな顔をして聞き返す彼はなんだか少年みたいだと思った。そう、彼はきっと少年なんだ。少年が成長してもっと輝いてるだけ。そんな簡単なようで当たり前の事に今気が付いた私は馬鹿なのか疎いのか。
「さっき言ったこと」
「さっき?」
「釣り合ってないだとか」
「ああ、うん」
「俺だって名無しさんにそう思う時があるぜ」
「小十郎が?」
「ああ」
「なんだ。お互い背伸びして疲れてただけなのね」
「不器用だな、俺達」
「そうだね。似た者同士仲良くやろうね」
ドレッサー貨物船
End
タイトル。妄想が広がるような素敵なお題だったので『教会と王冠』様からお借りしました。
どうでもいいけど、こう捉えようのないお題の方がかえって私は書きやすかったりします。すごくどうでもいいか。
ここまで読んで下さり有難う御座います。
20110922