戦国 BASARA

□ずっと隣に居てね
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夏休みといえば甲子園だ。たいていは扇風機の前で寝転びながら球児達の走り回る姿を見て少し憂鬱になる。年が近いのにあちらはスターでこちらは…なんだろう。同じ人間でも世界がまるで違う。比べることさえ間違っている気になる。ああもう、劣等感すら感じなくてむしゃくしゃする。お前はお前だと励ましてくれる存在が欲しい。



「……で、お前は俺に電話したと。」


「何よ。悪い?」


「No、悪くはねぇが。その態度は可愛くねぇな」


「こういう性分なの。政宗はそれに惹かれて付き合ったんじゃないの。今更よ」


「あ、試合終わったみたいだな」


「あ、ほんとだ」



[アーーーー]っと独特な音が鳴り響くと一方の球児達は歓喜し、もう一方には涙でくしゃっと歪んだ球児達の顔があった。マスコミは砂を持ち帰る球児に蠅のようにたかる。何度見ても複雑な気分になる。そりゃマスコミは仕事をしているだけだろう。でも私はそっとしといてやりなよ、と思う。
大人になればそんな事気にしなくなるなのだろうけど、私は受け流すことができない年頃なのだ。



「可哀相……」


「勝負ってのはそういうもんだ」


「厳しいね」


「ああ、厳しいさ。それより腹減った。飯作れ」



時計を見ると1時を回っていた。私もお腹が空いていたのでスパゲッティを持参して政宗の家に行くことにした。ソースはトマトをそのまま煮詰めてバジルとか香辛料を入れればいいかな。あ、ニンニクは政宗の家にあるよね、多分。
あらかたの材料をトートバッグに入れ、私は自転車で5分の伊達家に着いた。


チャイムを鳴らすと「入れよ」と一言。勝手知ったる人の家なので遠慮せず、玄関のドアを開けた。玄関だけで私の家の和室くらい広いってどういう事だ、と毎回思う。高そうな大きな花瓶に、これまた高そうな百合が活けてあるスペースがある。そこを通る時だけ慎重になるのは内緒。



「何を作るんだ?」


「トマトスパゲッティよ」


「oh!楽しみだな」



奥の部屋から着流し姿で出て来た政宗はリビングのソファーで寛ぐ。その間、私は愛しの旦那様のためにせっせと料理。夫婦ごっこが案外楽しい。






ずっと隣に居てね






end.

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