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□君と何年先も
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*二人は一緒の学校設定。
「一緒に帰るぞ。」
その日は珍しく、荒木から誘ってきた。
照れ屋が災いしてか、なかなか自分から誘ったりなんかしない。
よっぽどの用事があるときは別だが、大体俺から誘う。
もちろんそれは好きだから、誘うわけで。そんな好きな相手に誘われたら一緒に帰るほかない。
「ああ。」
軽く返事をし、かばんを手に部室を出る。いつもと様子が違うと気付いたのはその直後だった。
いつもは、嫌というほどペラペラしゃべる荒木が今日は一言もしゃべらない。
何かを話したほうがいいのかと悶々と考えているうちに、いつもの分かれ道。
少し立ち止まり「また明日な。」そう声をかけた。
そうすると、今まで口を開かなかった荒木が「ちょっと待てよ」といい手をつかむ。
「なに?」
俺がそう聞けば、無言で俺の手を引き近くの人通りの少ない路地へと入っていく。
「どうしたんだ?こんなとこはいって。」
「・・・誕生日・・・。」
やっと放たれた言葉は、聞き取るには余りにも小さく「え?」と聞き返す。
「だから、おめでとう。誕生日。」
そういってうつむく荒木。
忘れているかと思っていた。そういえばきっと怒るだろうけど、ホントにそう思っていた。
だって去年は忘れてたし、友達の誕生日を忘れる姿を何回も見てきたから。
だからこそ
「ありがとう・・・。すげぇうれしい」
と思って口にするんだと思う。
「おめでとうって言っただけじゃん。」
「それでも。好きな奴にいわれたら嬉しいじゃん。」
そういって、荒木に近づきハグ。
純粋に抱きしめたくて。近くに行きたくて。
そう思ったら体は自然と動いた。
荒木も顔を真っ赤にしながら怒ってはいるけど、決して離れようとはしない。
「なぁ、荒木。」
暴れる荒木にそう問いかける。
「んだよ。」
「誕生日プレゼント・・・」
「えっとーあー;;」
「用意してない?」
「いやっ!!しようとは思ったよ!!でもいそがしくて・・・」
「いいよ別に。」
「えっ?」
だって
人通りの少ないことをいいことに、荒木の唇に自分の唇を重ねる。
深い意味なんてない。ただ嬉しくて感謝してて好きだから。それだけ。
口を離せば、顔を必死に隠す荒木。
「ばかっ!誰かきたらどうするんだよ!!」
「あー。気にしてなかった。」
「ったく・・・もういいよ。」
呆れたのか、なんなのか溜息をつきながら一度はなれた距離をまた縮める。そして、今度は荒木から抱きついてくる。
「傑だって気にしなかったんだから俺だって一回くらいいよな。・・・おめでとう。傑。」
君と何年先も
こうして、一緒に誕生日を迎えられますように。
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