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□スナオな気持ち
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「明日の試合で俺がゴールを3点決める。そしたら付き合え。」


そういったのは俺のチームメイトで鷹匠瑛という男。
ここは俺の部屋。練習帰りに話があると言われ連れてきてみればすごいことを言
うものである。
この言葉に驚いているかと言われれば嘘になるがそんなに対してびっくりするほ
どのことではない。
というのも半年くらい前から会うたび同じようなことを言われているからだ。
こういう風に条件付きで言われたのは初めてだったが。


「やだ…。」


そう俺が呟いたが相手は俺の言葉を無視して勝手に話を進めていく。


俺だって始めは友達としてしかみることが出来なかったが、今はタカのことを恋
愛対象として好きだしタカとつきあいたいと思っている。


だけど今までさんざん断っておいて今更とか男女でも難しいつきあいを男同士で
しかも俺なんかと付き合ったりなんかしてプレイに影響がでたりなんかしたら大
変とか今更素直になるのもとか変な意地は恥、プライドのせいでなかなか素直に
なることができない。


なんてそんなことを考えているとタカから話しかけられる。


「まぁ嫌なら嫌でもおこらねぇし、まぁ3点とってねぇからまだ気が早いけど…
俺はお前に本気だから。」


そういって話を勝手に終わらせ俺の部屋からさっさっとでていく。


その日の夜、いつも以上になかなか寝ることが出来なかった。
タカが3点とってほしいという気持ちとやはり今までの関係のままでいたいと願
う気持ちが入り混じり複雑な心境でいた。


タカが好きだ。その気持ちに嘘はない。だとしたら、タカが3点決めるのをねが
うのもわるくないのかもしれない。でも…


そんなことを何回も考えながら眠りにつくのを待っていた。


そして試合当日。


相手は神奈川の中でもそこそこ強い強豪校。
のはずだったのだが、いつも以上にタカの調子が良く前半だけで2得点もきめた



しかし、後半になって少しバテてきたのか前半より動きが悪くなってしまい結局
1アシストは決めたもののタカ自身が得点を決めることはなかった。


試合の結果は3対2で勝つことが出来たのでミーティングも早く終わり俺もいつ
もよりはやく自宅に帰るつもりだった。


その帰りまたタカが昨日のように話があると言ってきたので、今日は昨日とは違
い近くの公園へと連れてこられた。


公園に着いたものの、気まずい雰囲気が流れていてしばらく沈黙が続く。


「悪いな…。今日。」


始めに沈黙を破ったのはタカ自身だった。


「えっ…?」


謝られた意味がよく分からず、聞き返してしまう。
性格上あまり謝るという行為をすることがないタカがいきなり謝るなんてそうい
った驚きもあった。


「3得点。あんなこと言っといて出来ねぇなんて俺やっぱ駄目だな。」


そう苦笑いしながら俺の言葉に返答する。


「そんなこと「ないわけがないだろ?約束守れなかったんだから。俺は飛鳥が好
きだからこそちゃんとしっかりゴール決めて付き合いたかった。それでふられた
としてもそっちのが諦めがつく。」


そんなことを思いながらプレイしていたなんてすごく嬉しい。でも…。


「タカ。なにか勘違いしてないか?」


「は?勘違いってなにを…」


「確かにタカは3得点きめると言ったが、俺はそれに反対も賛成もしてないし、
なにもいってないぞ。」


さっきのタカの思いを聞き嬉しい反面、自分がどれだけちっぽけな感情に振り回
されていたのだろうとすごく恥ずかしかった。


だから、今度はタカじゃない。もう自分の気持ちを抑えることなく、伝えたい。


「だから謝る必要もないし約束を破ったなんてことも考えなくていいんだ。それ
に俺だって…」


「飛鳥…?」


俺の体はまるで息を吸うように自然とタカの体へと抱きついており、一番言いた
かった言葉を発する。


「タカ…。俺もお前のことが好きだ。ずっとずっと。」


俺がそう言うと俺だけがタカの体に手を回していたはずなのだがいつの間にかタ
カも俺の体に手を回して強く強く抱きしめる。


「飛鳥…ありがとう。すげぇ嬉しい。」


タカはそう言いながら俺の顔に視線を向けると優しいキスをし、また強く抱きし
める。


ずっと言いたかったこの気持ち。


いまならお前に伝わったよな?


好き。俺はすごく好きなんだタカのこと。


それは俺がずっと思っていたけど伝えられなかった気持ち。

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