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□優しいアナタ 傑荒
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今日は俺の誕生日。
教室や部活で祝ってもらったりしてすごくうれしかったのだが、一番言ってもらいたいやつには何にも言ってくれさえもしなかった。
部活ももう終わり部室には傑姿はない。少し期待をしてのろのろと着替えをしてみたり、必要以上に動き回ったりしていたけど結局傑が来ることはなく、部室にいた部員たちも帰ってしまった。
もうこれ以上待っても時間の無駄かなと思い部室から出ようとすると前から声が聞こえる。
「荒木。」
それは今一番聞きたかった人の声で、うれし泣きしそうな思いをぐっとこらえわざと冷たくふるまう。
「なんだよ。」
「今日誕生日なんだろ?おめでとう。」
うれしかった。うれしかったのにそんな思いとは裏腹に思ってもいないことを口にする。
「よくいうよ。どうせ忘れてたんだろ?」
うれしいのにそれが言葉に出せない悔しさからまた泣きそうになる。
うれしいのに。うれしいのに言えない自分がいるのが悔しい。
そう思いながら、また心にはないことを言ってしまう。
「よく言うぜ。どうせ忘れてたんだろ?言いたいことはそれだけかよ。じゃあ俺帰るわ。」
俺は泣きそうになる気持ちをおさえながら、傑と顔も合わせず帰ろうとする。
「待てよ。」
傑はそう言いながら、俺を後ろから抱き締める。
「別に忘れてたわけじゃないんだ。全然じゃべらなかったのも部活が終わってすぐどっか行ったのも全部これを買うため。」
そういって傑はポケットから小さい小包を出した。
「よくほしいものとかわかんなかったんだけど、指輪とかだったらすぐつけられるだろ?」
と言いながら小包から指輪を取り出す。
そのあまりの嬉しさと今までの悔しさ一気に溢れて俺は泣いてしまった。
「ごめん・・・」
「何がだ?別にお前は悪くないだろ。というか泣くなよ。ほらてかして。」
そう言いながら傑は俺をまた強く抱きしめると、手をさしだす。
俺は傑に手を出すと指輪を付けてもらった。
その指輪はシルバーリングで俺のイニシャルと今日の日にちが裏に彫られていた。
「やっぱり似合うな。」
そういいながらにこっと笑う傑も見て俺も安心し今度は俺から、傑のほうを向いて抱きしめた。
「ありがとう。すげぇうれしい。」
と俺が笑顔で言うと傑が
「荒木は笑顔が一番いいな。」
そう言われ、俺の顔は赤く染まった。
end
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