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□初キス
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冬休み最後の日。


今日は海外に遠征していた傑が帰ってくる日。


お互い予定が合わず、クリスマスも大晦日も正月も一緒にいる事ができなかった。


せっかくの冬休みなのに自分の好きな人と過ごせず終わるのも嫌なので、「今日暇なら帰ってきた後に会わない?」なんて無理なのを承知して俺からメールするとすぐに返事が来た。


「いいよ。」これだけの言葉なのに俺はすごくうれしかった。


待ち合わせ場所も時間も決まったので、ワクワクしながらその準備をしていると、突然メールが来る。


携帯を開き確認すると、そこにはいとしい恋人からのメールだった。どうしたんだろうと思いながらメールを見ると「道が混んでいて今日会えないかもしれない。」とかいてあった。


「えっ・・・」


ショックだった。なんだか久しぶりに会えるとワクワクしていた自分が馬鹿らしくなってきた。そして、なぜだかはわからないけど、涙が出てきた。


ホントにこんなことでなくなんて女でもあるまいし情けなかったけど、それほど楽しみにしていたことなので悲しかった。


誰かに泣き顔を見られるのも嫌なので、泣き終わるまでずっとベッドの中にいることにした。


夢を見た。
傑がどこかへいってしまう夢。
何度呼んでも何度叫んでもとまる事はなかった。そして俺が目を覚ます直前に傑は立ち止まりこっちへ振り向いた。だがその瞬間に俺は目が覚めてしまった。


「すぐるぅ・・・。」


いるはずもない相手の名前を呼ぶ。ほんの数分でもいいから会いたい。こんな夢を見ていたらますます悲しくなるから。そう思っていると、さっきの呼びかけの返事が聞こえる。


「なに?」


えっ。声のするほうを向くとそこにはいとしい恋人の姿があった。


「傑!?何でいんだよ!?」


「なんでってメールしただろ?今からそっち行くわって。」


そう当たり前のように答える。



「だって会えないんじゃ・・・」


「いや、会えないとは言ってない。あえないかもとは言ったが。」



「なんだよそれぇ・・・」


傑が来たことにびっくりした気持ちと会えて嬉しい気持ちいろいろ入り交ざって、また泣いてしまう。


男のくせにぼろぼろなくなんてかっこ悪いなんて思いながら。


傑も俺がいきなり泣いたもんだからびっくりしたみたいだったがすぐに抱きしめて何度も「ごめん」とつぶやきながら、鼻や耳、おでこなど唇以外のいろいろなとこに唇を落としていく。


「傑。」


「なに?」


「何で唇にしてくんねーの?唇にしろよ。」


俺がボソッとそうつぶやくと、「はいはい」といいながら俺の目尻にキスをすると


「たくっわがままなお姫様だな」


そう笑いながら俺の唇にそっと自分の唇を落とす。深く甘い優しいキスを。


キスし終わると、俺がこう呟く。


「そういえば、今年初めてキスしたな。」


傑もそれに答えるようにして微笑み


「じゃぁ初キスだな。」


と呟いた。


end
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