ぶん

□あの現実が壊せたなら
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飛鳥さん。好きです。
簡単な言葉なのにも関わらずいえないこの言葉。
別にこの言葉が怖くていえないんじゃない。かといって恥ずかしくて言えないん
じゃない。


いってはいけないのだ。


そうじゃないと飛鳥さんを困らせてしまうから。


飛鳥さんには俺が入学した当初から恋人がいた。鬼丸春樹という男で俺が飛鳥さ
んを好きになったときからずっと隣にはあいつがいた。


飛鳥さんがあいつに見せる表情一つ一つが特別で彼らがお互いを思い合っている
ことがまるで手に取るようにしてわかる。


だからあったときから手が出せなかった。飛鳥さんが余りにも幸せそうだったか
ら。飛鳥さんが余りにも嬉しそうだったから。


困らせたくないと思った。それに飛鳥さんが俺を選ぶわけもなければ見てくれる
わけもないってわかっていたから。


だから誰よりも何よりも伝えたいこの気持ちを心に押し込めているんだ。

困らせたくないから。飛鳥さんが俺を見てくれないという現実を受け止めたくな
かったから。


あの現実が壊せたなら


そうだったなら飛鳥さんは俺を見てくれるのに。


end

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