ぶん

□特別な存在
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会いたい
理由なんてない。ただ会いたかった、それだけ。今日に限ってそんな気持ちでい
っぱいになって幸村くんに会いに行っちゃうなんて。


本当についてない。今日でなければどれだけよかっただろう。


仮病を使って部活を早く切り上げ、幸村くんに会いに行く。いつものように病室
のドアをコンコンとたたく。いつもなら10秒もせず返ってくる返事が今日は返
ってこない。


おかしいな…そう思い再度ドアをノックするもやはり返事はない。


頭をくしゃっと掻き、今度を言葉をかけてみる。


「おーい幸村くーん。いるんだろぃ?返事しろよ」


だが返事はない。さすがに不安になってきたので、病室のドアを開けようとドア
の取っ手に手を掛けると病室からか細い声が聞こえる。


あまりの小ささに聞き取ることができず、聞き返せば今度はしっかりした声で「
来ないでくれ。」ときこえた。


「なんで、なんでだよ。せっかく来たのに…」


「来ないでくれって言ってるだろ!!誰にも会いたくないんだ!!」


幸村くんがこういうことをいうのははじめてじゃない。関東大会で負けたとき、
一度こうなったことがある。


でもそのときは、俺1人ではなく、真田や柳、ジャッカル、仁王などいつものレ
ギュラーメンバーが一緒だった。


でも俺は今日1人。どうしてよいかわからず、病室の前で立ち尽くすことしかで
きなかった。そして今に至るわけだ。


頭の中はぐちゃぐちゃに混乱していて誰かに頼ろうとか、いったん家に帰ろうと
かそこまで思考も回らなかった。本当にただ立ち尽くしている状態。


立ち尽くしてから何分たっただろう?もうさすがに帰らなきゃならないだろうと
思い、帰ろうと幸村くんの病室に背を向けたとき、サイレントマナーにしていた
携帯のディスプレイに文字が浮かび上がる。


そこには、幸村精市の文字。


通話ボタンを押せば、いつもの優しくて強い幸村くんの声でなく弱々しく頼りな
い声の幸村くんがでた。


「…ブン太…?」


「どうしたの、幸村くん。具合悪いの?気分悪いの?大丈夫?」


さっきの態度が気になりつい質問攻めしてしまう。


「ブン太…まだ時間ある…?」


「ああ、あるよ。」


「来てほしいんだ…きてっていったりこないでっていったり、悪いんだけど…」


そう言われ、急いで幸村くんのとこへいけば携帯を片手に声同様弱々しく、目を
赤く腫らした姿があった。


「幸村くん…」


変わり果てた彼の姿を見ていてもたってもいられず、幸村くんの細い体を強く抱
きしめる。


「ブン太…俺ね…全部やになっちゃって。八つ当たりしちゃったんだ…ブン太は
なにも悪くないのにね…」


抱きしめた体がふるえている。幸村くんの気持ちを考えたら自分まで泣きたくな
ってきて。


「八つ当たりくらいいくらでもすりゃあいいよ。それで少しでも楽になるなら。



「優しいなぁ…ブン太は。…じゃあ一つお願いしていい?」


「なに…?」


「今日だけ…今日だけででいいから泣いていいかな?」


それを聞いたら押さえていた自分の涙がでてきて。本当に自分の頼りなさが嫌に
なる。でも…


「いいに決まってんだろぃ?俺の前だけならいくらでもないていいぜぃ。」


「ありがとう…。」


でも、こんな幸村くんをささえるのも、こんな俺を見せるのもお互いが特別な存
在だから…だよな。


end



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かいちゃった。
かいてしまいましたよorz
ちょっと息抜き程度でかこうと思ったらどんどん長くなるもんだからサイトにのっけてみましたw
これからもテニスはちょくちょく書いていこうと思う・・・
こんなものまで読んでいただき本当にありがとうございます。


8・25

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