エリア2

□一瞬の幸せと永遠の辛さ
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誕生日前日。そんな日だっていうのに、俺は今日も部活。はっきりいってあまり誕生日というものを覚えていない。


それほど部活で埋め尽くされた一週間が終わりを告げ練習で疲れた俺は、寮に帰ってすぐに寝てしまった。しばらく寝ていたが飯を食うため無理矢理起こされ仕方なく、起きて飯や風呂をすませ、いろんなことをしているうちに夜中の一時を回っていた。


すっかり目が覚めてしまったため携帯をいじっていると、一件不在着信が入っていることに気付く。
不在着信をみてみると、それはすごく珍しい人からの電話だった。


その相手は俺の思い人であり一生届かない相手、飛鳥享さんだった。着信があったのは、今から30分前。かかるかはわからないがかけてみる。


『…もしもし』


すると、愛しい相手の声が聞こえる。どうやら寝てはいなかったようだが、少し不機嫌気味の声。


「飛鳥さんですか?俺です。蝦夷です。」


『タクか?わるいな。電話なんかして。』


飛鳥さんは俺とわかると少し声音が明るくなる。


「いや。全然平気ですから。で、なんかあったんですか?」


『いや大したことじゃないんだが、蝦夷が誕生日なのを思い出してな。』


飛鳥さんにそう言われると、携帯の日付のところを見る。5月30日とはっきり記されている。


「忘れてた…」


俺がそう言うと飛鳥さんはフッと笑い「そうだと思った」という。


『それで、メールより電話のがいいと思って電話したんだよ。』


「ありがとうございます…」


『改めて誕生日おめでとう。タク。』


やばい泣きそうだよ。嬉しい。だって飛鳥さんが自分すら忘れてた俺の誕生日を覚えてくれてたんだもん。


『あっあと渡したいものがあるから、俺の部屋に来てくれないか?明日の朝。』


「わかりました!!」


『悪いな。さすがに今からはな。(飛鳥さーん)・・・じゃあ明日な。』


そういって電話を切る。


今聞こえた声。間違えなく鬼丸さんだった。飛鳥さんの恋人。


さっきまでの夢見心地の気分は何処へやら。一気に現実に戻された気がした。


一瞬の幸せと永遠の辛さ


もし一番はじめがあなたじゃなかったらもう少し現実的にみれたでしょうか。


幸せだったあの一瞬が今ではまるで幻のよう。
こんなに好きなのに。こんなに愛しているのに伝わらない。


せめて今日だけは幸せでいたかったな。


end

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