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□一緒にいたいから
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「これにて葉陰学院卒業証書授与式を閉式します。皆様、退場する卒業生に拍手をお送りください。」
飛鳥さんの卒業式が終わった。
いつまでも近くにいて支えていてくれた人がいなくなる。今までそんなこと考えても見なかった。いや考えようとしなかっただけかもしれないけど。
とにかく今日で飛鳥さんはいなくなるのだ。実感はわかない。でも、頭のどこかではそれを認識しているのか心に穴が開いたようなそんな気分。
そして、一緒に帰るのも今日が最後である。
「飛鳥さん。待たせてすみません。いきましょっか。」
俺がそういうと飛鳥さんは無言でうなずく。二人一緒に歩き出し手からしばらくして俺が
「手、つないでもいいっすか?」
そう聞くと、飛鳥さんは若干顔を赤らめながら、
「別にいいよ」
そう承諾してくれたので俺は飛鳥さんの手を力強く握る。
「鬼丸、お前は俺が2年間先輩でよかったか?恋人でよかったか?」
といきなりそんなことを飛鳥さんが俺に聞いてくる。
そんなこというまでもない。だって俺は貴方にずっと憧れて、ずっと慕ってずっと見てきた。だから
「そんなの聞くまでもないじゃないっすか。いいに決まってますよ。むしろ、飛鳥さん以外の人だったら今の俺はいません。」
俺がそういうと飛鳥さんはホッとした様に真剣だった顔を緩め笑顔になる。
「ありがとう。俺もお前でよかったよ。」
そういうと、目の前はもう飛鳥さんの寮で飛鳥さんは「いままで、ありがとうな」というと寮へ走って入っていく。
このままでいいのかな。不意に俺の頭にこんな言葉がよぎる。そう思った瞬間俺の体は動いていた。
「飛鳥さん!!」
俺はそういいながら飛鳥さんの腕をつかむ。
「今までって何ですか!?俺は飛鳥さんとずっと一緒にいたいです!!」
そう叫ぶと飛鳥さんはうつむきながら
「俺もいたいけど。でもな、俺は東京に行くし、遠距離なんて耐えられるかわかんないだろ?ならいっそ・・・」
「そんなこと気にしません。飛鳥さんがあいたいっていうのならどこへでだって行きます。だからそんなこといわないで・・・。」
俺はそういうと小さく震える飛鳥さんを抱きしめる。
「ありがとう。ありがとう春・・樹・。」
「!?飛鳥さん今・・・」
俺がそういうと飛鳥さんは耳まで真っ赤にして寮へ入ろうとする。
俺はそれを必死に止めながら思った。
馬鹿で、あほで、気利かなくて、勉強できなくて、飛鳥さんがいなかったら唯一のとりえすらなくしそうだった俺をこんなに愛してくれて考えてくれてる人を手放したくない。
二人でずっと一緒に。
end