LOOKON
□人がいるなら神もいるさ
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すっと目を開ける。
つい先程浴びた眩しい光とは違う、柔らかで丸みのある優しい光が目に飛び込んできた。
ゆっくりと上体を起こし、きょろきょろと辺りを見回してみる。知らない、場所。いつの間にか私は、さっきまでいた場所とは違う場所にいた。
そこは何とも不思議な空間だった。ぐちゃぐちゃと混ざり合った様々な色が、辺り一面に溢れ返っている。例えるなら幼子が色々な水彩絵の具を白いキャンバスに塗りたくったかのような…。マーブル、という名詞がよく似合う。
見つめ続ければ酔ってしまいそうな、そんな色で。私は思わず顔を逸らした。
気持ち悪い、何なんだここは。
『へいへいやっほう!神さま登場!』
眉をしかめた、正にその瞬間だった。ソプラノともアルトとも取れぬ、特徴的な高さの声が聞こえてきたのは。
『ふひー、ちょっぴしお疲れだよー神さまは。ヲタの相手って意外と大変なのよーう。』
「………。」
目の前に現れたのは、十ほどの幼女。だぼっとしたスリップドレスを着て赤いリボンで結われたツインテールは床にまで伸び切っている。不審人物二号。しかも自分を神だの何だのと抜かしやがった。
私の表情が、消える。
「理解不能。」
全てが、お前が、ここが。
呆然とする彼女に、またやってしまったのかと感づいた。理解し難い事があるとどうしても無表情になってしまう。悪い癖だ。
「ああ、これは失礼」
へらりと笑顔を浮かべ、私はもう一度口を開く。
「理解したくもないけれど。」
取り合えず初めから説明して貰おうか。
そう続け様に話した私に、幼女は幼女らしかぬ不気味な笑みをにやりと深め、くすくすと笑った。
『いいよー、んじゃあ折角だし初めから仕切り直そうかっ』
「…は?」
『やあやあ、こんにちは。
私は君等の所では神様に当たる存在だよー。偉いよー、凄いよー、敬えよー。まぁ気軽にかみぃと呼んでくれたまえ!』
本当に初めから。何だこれ、意味ある?
というか、…は?神?
「悪いけど厨二病患者に付き合っている程暇じゃない。他当たれ。」
『ちっちっちー。嘘じゃあないのさっ!何なら…そうだなぁ。
君が快楽主義者であり保身的思考である事、そして矛盾した歪みを持つ至極厄介な性格だと言う事を言い当ててあげようかっ!』
「もう言い当ててるけど。」
『えー、何な「ああもう良い、黙れ」うわぁ酷い言われ用だなぁ』
自分のこの捻くれた歪んだ性格をわざわざ口外するような馬鹿な真似はしたことはない。
つまり自分の難儀な性格は自分しか理解していないという事で。
どうにも認めざる逐えないようだ。こう見えても順応性は意外に高い。
「で?神さまとやらが私に何の用?」
『いやねー、アニメの世界にトリップしたいっていう女の子がいたんだけどー。その子のお願い聞いてトリップさせたらさぁ何と君まで巻き込まれちゃって!』
「……は。」
てへ。可愛くないぶりっ子ポーズを見せられた私は何て可哀相。色々と突っ込み所があるんだが、どうしたらいい?
「ちょっと待て。お前が神だというのは百歩譲って認める。けれどトリップって…。」
『んあ?そのまんまだよー?意味は。アニメの世界にトリップしたかった女の子がいてー、私がその願いを叶えてあげたんだってー。』
にやり、と笑みを浮かべる目の前の幼女に私は不快感が沸き上がるのを感じた。
願いを叶えた、とこいつは言った。