BOOK(K)

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「…とれない」

首輪を嵌めてあっさりと帰って行った弟に、少しだけ残念に思いながら、その日は風呂に入るまでその首輪を付けていようと思った。なんだかんだいって、弟からのプレゼントなのだから。

だが。しかし。

洗面台に移した自分の姿を見て初めて気付いた。首輪には、小さな錠がかかっていて、引きちぎらない限りそれは外れないようになっていた。

「遥のやついつの間に…」

そしてもう一つ驚いたのが、鏡に映った自分の顔。
黒いインクで『水に濡れても水につけても大丈夫♡』と書かれていた。
思い切り疑惑あり気に鏡を睨みながら、とりあえず首輪を引っ張ってみたり鍵穴にピッキングしてみたりと色々と試してみたが、やはりちぎる意外に、いや、ピッキングでどうにかならないのならちぎることだって無理なのかもしれないと思い始める。
仮にも元警察犬なのだから、ピッキングの腕は確かだという自負はあったのに。

「しかたねぇ…このままか」

こんな小細工をしていくということは、近々、向こうが来るか自分が来るか、どの道すぐ会えるということなのだから。
遠巻きな次の逢瀬のお約束とばかりに嵌められたその首輪を、そうとわかれば洋はうれしそうに鏡の前でほほ笑んだ。



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