BOOK(K)

□vital
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「にーにとお風呂♡」
「あんまりはしゃぐなよー?ぶっ倒れたら俺んち連れて帰って軟禁の刑だからな!」
「ああんにーに♡すっごく素敵だね!」
「考えただけでも幸せだ」

意外と家庭的で思ったより狭い風呂釜は、男二人で入って丁度良いくらいの広さだった。
最初にきれいに身体を洗って、お互いに背中を洗いあって、洋は嬉々として遥の髪を丁寧に洗う。
なめらかなさわり心地、指通りにうっとりしながら、そのうち鼻歌まで聞こえ始めた。

「にーに、気持ちいい…」
「ん、そうか?かゆいとこないか?」
「んーん、ないよ」

昔はシャンプーハットが手放せなかったのになぁ、と笑うと、遥は頬を膨らませて「もう子供じゃないんだからっ」と拗ねるように言った。
それでも、頭を洗っている最中は終始きつく瞼を閉じていて、やはり苦手なものは苦手なんだな、とおかしくなって、笑った。

「はい、終わり!」
「ん〜、気持ちよかった!ありがとうにーに!」

数日ぶりに身体の汚れを落とし、幾分か身体も軽くなったような感覚に遥はうれしそうに湯船につかった。
身体に飛んだシャンプーの泡を洗い流して、洋も湯船につかる。湯船に浮かべたアヒルのおもちゃを指先でつつきあいながら、肩までしっかりともぐった。

「そうだ、にーに。僕さ、あれから考えたんだよ」
「んー?」
「この間は僕、疲れて気絶しちゃったけど、今度は気絶しないようにって、他の手を考えたんだ!」
「…この間…?この、あい、だっ・・・!!!」

ぼんっ、と頭から湯気が立ち上りそうな勢いで、洋の顔が紅潮する。十中八九あのマーガリン事件の事だろう。
元気になるから、といって始めたあの行為は、今から考えれば本当にそうだったのかははなはだ疑問であったりする。

「僕ね、にーにの可愛い姿みるとすっごく元気になれるみたいなんだぁ…。お願いにーに、僕の為に、可愛いところ見せて…?」
「お前のほうが可愛いから無理だ」
「にーにも可愛いんだよ?ね、ね、にーにぃ」

すり、と身体をすりよせて、遥の細い肩が洋の肩に触れ合う。下から覗き込むようにして顔を見上げられては、洋も頷くしか道は無い。

気持ちばかりの抵抗をこめて、小さく小さくうなずくと、とたんににやりと弟は笑う。
風呂の隅にいつの間にかおいやられていたアヒルのおもちゃを手にとって、裏返す。アヒルの横腹をはさみこんで抑えると、腹の窪みからつるん、と小さな楕円形の塊がこぼれた。

「遥、なんだそれ?」
「にーにが可愛くなれる魔法のおもちゃ♡」
「…?おもちゃ?それが…っびゃああああ!!」
「あはっ、にーに面白い声♡」

遥の指が突然後孔に触れる。ぞわり、と鳥肌の立つような感覚が背筋を駆け抜け、間抜けた悲鳴が上がった。



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