BOOK(H)

□infancy
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自分がまだ小学校に入学したばかりの頃、幼少のころから一緒に遊んでくれていたオニイサンはすでに、中学校という一つ上の学校に進んでいた。
オニイサンは身体を動かすことが大好きで、中学校でもそんな部活に入って、毎日帰ってくるのは夜遅くだった。土日も休みなく学校に通って、なかなか自分のことを、かまってくれることがなくなった。

天化は近所のオニイサンの事が大好きだった。親同士が仲が良いお陰で、まるで兄弟のようによく一緒に遊んでいた。
小学校に上がってからはそれはめっきりへったけれど、同学年の友達も出来て、放課後は彼らと日が暮れる直前までしっかりと遊んだ。でも何かが物足りない。
歳が七つも上のオニイサンなら教えてくれるたくさんの真新しい知識は、彼らは持っていないのだ。

友達との遊びに満足が出来ない。手をつないだ時の小さな手は頼りない。引っ張られる力もかよわくて。
足りない。足りない。
でもオニイサンはもう、前みたいに自分とは遊んではくれない。

天化は、どうしようもなくなった。
あるとき、母親と買い物の帰りに、久しぶりに出会ったオニイサンが、同じ制服を着た人たちと楽しそうに話しているのを見て、母親に手を繋がれているにも関わらず、大泣きをした。




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