BOOK(H)
□landmark
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「何してるんさ、コーチ。似合わないもの抱えて」
「やぁ、おはよう天化!今日も気持ちのいい朝だね!」
朝、顔を洗って服を着替えた天化が、朝の筋トレに出ようと廊下を歩いていた時だ。
廊下の向こうから、分厚い書物を抱えた師父が歩いてくるのを見て、声をかけずにはいられなかった。
崑崙12仙たるもの、こうして勉学に励む事もあるのだろう、と頭の端で思い浮かべたが、そもそもこの師父が今までに書物を開いて悶々としている姿など見たことがなかったために、それは無いと棄却した。
だとしたら、なんだ。洞府の掃除でも始めるつもりなのだろうか。ちょうどいい、洗濯物も溜まっていたところだ。
「これどこに片付けるのさ?」
うっかりすれば崩れ落ちそうになるそれを、上半分手伝って、そう尋ねた。
「これで勉強するんだよ」
「へ?勉強?」
まさか。
会議に必要な書類など必要最低限机上で行う仕事があると言っても、師父が机上に書物を並べ自ら勉学に励む姿など過去にまだ見たことがない。
それとも自分が?
しかし何せ師父が自分に教えるものと言えばもっぱら戦術。屋外で身体を動かすことばかりだ。座学をしないというわけでないが、そういった類は主に、普賢真人や太乙真人のもとで学ぶことが多かった。
「なんだいその顔。俺と勉強するのはそんなに嫌かい?」
「コーチと、勉強するのさ?」
「意外かい?」
「まぁ、そりゃぁ」
一体どんな内容なんだと興味がわかないわけでもない。この人が椅子に座っておとなしく教育指導を行う様子はきっと、彼をよく知る人達からだって物珍しく見ものだろう。
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