BOOK(K)

□vital
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『大好きなにーにへ(はぁと)
お久しぶりです、その後の調子はどうですか?遥は今日もベッドに縛り付けられて、にーにに会えない寂しさに涙で枕をぬらす毎日を送っています。
ところで、僕が会いに行けないのならにーにに会いに来てもらおうと思って手紙書きました。
僕はもうにーにに触れてもらいたくていてもたってもいられないよ、にーにの為に髪の毛一晩洗わずにまってるからね、にーにの手で優しく洗われたいな♡きゃ☆
追伸:居場所は僕の髪の毛にあり♡ 遥より』


「最近よく手紙がくるな。それにしても、余白部分だけに血が飛び散っている…段々器用になっていくなあいつは」
「息子の成長を喜ぶようなほほえましい表情ですね荻さん」




「にーに!来てくれたんだね、にーに!」

「遥っ、ああ、そんなにやつれて、大丈夫か!?」

もともと病的なほどに色白い弟が、白色の病衣なんて着ているからますますはかなく見える。腕から伸びる点滴は、食事さえもとれないのだろうかと洋を酷く不安にさせた。

「にーにが来てくれたからすごく元気になったよ、これもういらないや」

ぶちっと点滴を腕から引き抜く。小さな水滴が散って小さな針が床へと落ちた。

「遥っ、だめじゃないかっ」

慌ててそれを拾い上げても、結局それを基に戻すことはできない。チューブをフックに引っかけて、せめて見た目だけでも整えておいた。
そんな洋の横で、遥は口先をとがらせながら文句を言っている。

「…だって、本当にいらないんだもん。それよりにーに、お手紙みてくれたんだよね?」

「あ、ああ、うん。だから来たんだけど…」

「僕ここでずっと寝てたから、実はしばらくお風呂入って無くて…にーに一緒に入ろう?」

こっそりお風呂道具も用意してあるんだよ、とベッドの下から小さな桶を取り出す。その中には入浴セット。用意周到に黄色いアヒルのおもちゃまで入っている。

「…心配だったらはい、どうぞ好きなだけ!」

「お、おう」

本当に大丈夫なのかと明らかに怪しんでいる兄に、遥は体温計を押し付ける。ついでになんだかよくわからない「健康診断記録」と書かれたノートも手渡され、洋は体温計を遥の口につきいれ、その間にパラパラとノートをめくる。それには食事の内容や定期的に検温した結果や様子が細かく書かれていた。

「熱、ないよ、にーに」

「ほら」と体温計を差し出す。それをしっかりと確かめて、それならば仕方ない。と、遥に手を貸してベッドから下ろした。



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