All R20.
□escape with you
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コンクリートの打ちっ放しの部屋。何の敷物も敷いておらず、裸足で歩けば2、3歩で足先が冷たくなった。
「奈央、っ!」
恋人の名を呼んだが返事の代わりに右頬を殴られた。唇が歯に当たり、血が飛沫する。俺の体は吹っ飛ばされたように冷たい床に叩きつけられた。
「な、」
目を合わせようと顔を上げたら、奈央に顔面を蹴られた。今度は鼻血が床を汚す。灰色のコンクリートに落ちる鮮血。
鼻血は無様だと思い袖で押さえてみるものの、袖が真っ赤に染まるし、尚も血は出るし、どうにもならない。
「どしたの?」
いつもながら酷い仕打ちの奈央に尋ねるが、答えはない。
言葉を交わす事なく、次に腹を蹴られた。それが上手い具合に鳩尾に入ってしまい、呼吸器系が一瞬止まった。
「ぐぅっ・・・ハァ」
呼吸が絶えてるさなか、奈央は俺の胸倉を掴み上げ、散々に殴った。頬ならまだしも眼は相当痛かった。
「俺、お前のこと嫌いなんだよ」
気が済んだのか、殴り終えた奈央が言った。
「その顔、マジ殴りたくなる」
「・・・そ、そっかぁ」
―奈央がそう言うんだから、しょうがないよね。
ボタボタ垂れる血がどっから流れてるのかさえ分からない。
垂れる流れる巡る血の量だけ、俺は奈央が好きだ。
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