All R20.

□1
2ページ/6ページ

「冷たッ」

顔に冷水をかけられ、亜沙斗は反射的に飛び起きた。長めの髪を伝い落ちた水がスーツにじんわり染みを作る。

「な、何?!」

何事かと慌てふためく亜沙斗は、今ので酔いが醒めてたようだ。その証拠に目の前に立つ如月を見るなり、サァッと青ざめた。
どうやら、亜沙斗は『まさか』如月だと思わなかったらしい。

「如月さん・・・!」

名前を呼ぶと同時にソファから勢い良く立ち上がった亜沙斗であったが足下がふらつき、床に座り込んでしまった。頭が冴えても体からはまだアルコールは抜けていない。
おずおずと顔を上げると静かに怒っている如月の視線が突き刺さった。

「貴方はお酒に弱いんですから、一気飲みは丁重に断って下さい」
「いや、だってさ、お客さんから頼まれ・・・」
「飲むのは結構ですが、店で吐かれたら困るんです」

丁寧な言葉遣いの裏に隠れた沸々と湧き上がる怒りに亜沙斗は怯える。

―恐ぇよ、テンチョー。

亜沙斗は内心、早く説教が終わって欲しいと思った。敬語で説教されるのは精神的に痛い。

「聞いてますか?」
「はいっ!」

耳をつんざく様な亜沙斗の返事。何が何でも亜沙斗はこの説教の時間を早く終わらせたかった為、わざと大きい声で返事をしたのだ。だが、それは裏目に出た。
返事した声はあまりに大きく、逆に如月を不快にさせてしまったのだ。如月は眉間に皺を寄せた。
2人の間に起きた沈黙。

「如月さん・・・?」

重い空気に耐え切れず、先に声を発したのは亜沙斗。チラリと如月の表情を伺うと、如月がクッと口角を上げて、
笑った。
それは妖しくもあり、雄の色気を漂わせていた。


「亜沙斗、返事だけと言うのは無いでしょう?」

―え?


如月は呆然とする亜沙斗の腕を引き、立たせる。何、と訊いてくる亜沙斗の肩を押し、ソファに倒した。

「いっ!・・・き、如月さん?!」

驚愕の表情が如月を見つめる。その顔は何だか滑稽で、如月はさらに笑った。

「貴方は少しばかり、いえ、かなりマナーが悪いですね」

如月がソファに片膝を付き、亜沙斗の上に覆い被さる形となる。
上半身を起こそうとする亜沙斗の首に、如月が右手が触れた。首に見える血管の筋を長い指がなぞってゆく。

「やっ」

拒否反応を示す亜沙斗を無視し、如月の手は彼のネクタイに辿り着いた。しゅるりと布と布が擦れる音と共に、亜沙斗の綺麗な鎖骨が覗く。

「ちょっな、何・・?!」

亜沙斗が如月の肩を押し返そうと奮闘するのを余所に、如月は両手をYシャツに掛ける。
そのまま、

ブチブチブチ・・・

「ぅわっ!!?」

左右に引き裂いた。飛び散ったボタンが亜沙斗の顎を掠める。それと同時に、亜沙斗の白い肌が外気に晒された。

「如月さ、ん・・・冗談キツいッスよ・・・」

声が震える。恐怖故に。

「冗談では無いですよ。今後こんな事がないよう、店長の私が教育して差し上げます」
「要らな・・・ゔッ!」

有り難くない申し出を断ろうと亜沙斗が口を開くと、それを妨げるように如月が亜沙斗と髪を力強く掴んだ。余りの痛さに亜沙斗が呻く。

「聞き分けの無い子は嫌いですよ」
「ひゃあ・・・!!」

如月が、露わになった亜沙斗の胸に申し訳なさそうに付いている乳首を爪で引っ掻いた。一瞬走る痛みに亜沙斗が体を仰け反らした。

「っいたぃ・・・うぅ」

千切れんばかりに引っ張れば、亜沙斗が大人しくなった。目尻に涙を浮かべながら。

「亜沙斗、大きな声で返事するだけではダメなんですよ。小学生じゃないんだから・・・」

如月が右の乳首を口に含み、カリッと音と共に、

「ひぃッゔ」

歯を立てた。
亜沙斗の喉が悲痛の呻きで鳴る。

「痛いのは好きですか?」
「違う!嫌ァ!離しッ」

尚も執拗に歯で弄ぶと、イヤイヤと亜沙斗が首を振って、抗う。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ