作品集
□school&
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「進路は?進学するわけ?」
あっけらかん、いや、ズケズケと聞いてしまうのも性格の一つ。これを長所か短所か決めるのかは、人それぞれ。不知火はどう思っているのやら。
「進学したい」
「へぇー。県内?県外?つか、どこ志望?」
ここまでくるとデリカシーの無さが露呈されている。だが不知火は素直に答えてくれた。
「慶應」
流石にすぐには返答出来なかった。1、2拍の間があってから、
「マジっ?!」
慶應と言えば、誰もが聞いた覚えのあるトップクラスの大学名だ。
「あー・・・っそ。不知火なら、そうだよなぁ」
記憶を手繰ってみる。不知火が秀才だと言うことを何回か耳にしたのを思い出した。
「センターで?」
センター試験で行くのか。
「ああ」
不知火が、そうだ、と軽く頷いた。
「マジぃ?センターねぇ。やっぱし英語出来ないとヤバいよなー」
「英語が苦手なのか?」
なかなか会話が続く2人である。今日が初めての会話だと言うのに。
「苦手、ニガテ!」
「文法が分からないのか?」
「文法が7、単語が3の割合かなー」
眉間にぐっと皺を寄せながら、さも難しそうに答えた。喜怒哀楽が分かりやすいこちらに比べ、不知火は表情を変えず、微動だにもしない。端から見れば、滑稽な2人に見えなくも無い。
「教えてやろうか?」
「は?」
「英語。お前に」
不知火の提案に面を食らう。直々に英語を教えてくれると言う秀才を、少なからず訝しんだ。
「・・・なんか企んでたりしちゃったりする?」
本心を訊いてみたが、不知火の表情はさっきと変わらない。と言うより、さっきから変わらない。
何も企んでは無さそうだ。
「よし!その誘い、乗った!英語教えてくれー!」
不知火はコクリと頷いた。了解の意。
「不知火ー」
「何だ?」
一切表情の変わらない相手に、ニカッと笑いかけた。
「俺のこと、『みっちゃん』って呼んでー」
これには不知火はすぐには頷かなかった。
「それは・・・」
みっちゃん。些か呼ぶのに恥ずかしい呼び名である。
「えー?みんなコレで呼んでくれるしー」
不知火が了解しないので不服そうである。
「・・・努力はする」
「あー?みっちゃんって呼ぶのに努力とか要らないだろー」
不知火はそれ無視して、歩き出した。
「あ!ちょっ、待って」
慌てて『みっちゃん』が不知火を追った。
end.