作品集

□02.これって恋?
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「なぁ、」
「彼女の事意外だったら質問に答えてやる」
「ゔ・・・」

じゃあ、質問なんかねぇよ。訊きたかったのは、もろ『秋吉の彼女』についての質問だから。他に質問なんか・・・ねぇよ。


パチン

テンポよく鳴るホッチキスの音。

パチン

パチン

パチン


その音が何回鳴ったか知らないが、突然秋吉が、

「藤田、お前の案通ったから」
「・・・はい?」

案?
なんかあったけ?

「企画書に書いただろ?あれだ」
「あ・・・れ・・・」

マジ?!!
あんなクソな案がか?てか、何書いたか自分でも覚えてねぇし。

「まぁ、お前だけが締切守ったからな」
「ェえ?」

俺だけ・・・締切守って出したのか、企画書。馬鹿みてぇじゃん!

「他の奴らはどうしたんだよ?!」

俺よりずっと良イ子ちゃんな奴らは?!!

「・・・」

ふと黙ってしまった我が副会長様。どうしたんですかー?

バチンッ

一際大きな音を立て、秋吉は紙束をホッチキスで止めた。
どうやったらあんなデケェ音が鳴るんでしょー。

「あの野郎共、」




はっはぃイ?
秋吉が秋吉が秋吉が秋吉が、「野郎共」って!
紛れもなく秋吉の口から出た声。めっちゃドスの利いた恐ろしい声。

え?え?怒ってんの?
誰に?俺に?

バチン

「締切伸びねぇのかってウザったく訊いてきやがって。伸びねぇってあれほど言っといただろぉが」

あ。それ、俺も含まれちゃったりします・・・?

バチン

「会長も会長なんだ。企画書出せって言っといて俺に集めさせやがって。あの野郎」

バチン

バチン

パチン・・・

トントン・・・

どうやら紙束を全て閉じたようだ。ホッチキスの鋭い音が消え、紙を整える軽快な音と変わった。

「と言う事だ」
「え、あ、ふーん」

割愛し過ぎじゃありませんかアナタ。
秋吉は何事も無かったように閉じた紙束を丁寧にクラスごと分けている。

「俺さ、何書いたか、正直覚えてねぇんだけど。そんなに良かったんだ、俺のヤツ」

敢えてちょっとエロっぽく言ってみた。倒置法って何かエロさが増す、魔法の文法!

俺のちっさい努力らしきものが伝わったかどうか知らないが、一旦手を止めた秋吉が振り向いて、

「あの汚い企画書は読むのさえ苦労した」

ソレハソレハ、ドーモ、スミマセンネ。
殴り書き過ぎた?急ピッチで書いたからさ〜。許してよ。

「だが、お前はちゃんと企画書出してくれたしな。アイツ等なんかよりよっぽど良い」

フッと口角を上げて笑う秋吉。やん、カッコ良すぎ。これ以上惚れさせてどうすんの。恋い焦がれて死んじゃう。

「あの時は悪かったな」

あの時ぃ?

「お前まで締切伸ばせって言ったからイラついた」
「あーあれねー・・・」

まぁ、あれは企画書書いてなかった俺が悪いんですけどね。9割方。

「『馬鹿』は言い過ぎた」

秋吉の申し訳なさそうな表情に、キュウッと胸を締め付けられた。
ヤダヤダ、お前のその顔嫌い。もっとしゃんとしてくれてなきゃ。

俺が惚れたのは『そっちのお前』なの。

「驚いた。まさか本当にその日の内に出してくれるとは思わなかった」

ん、俺も自分に驚き。まさかその日中に企画書書いちゃうなんてな。締切守るとかマジありえねぇよ。でも守っちゃたのは事実。俺、偉い。

「案外お前ってイイ奴なんだな」

秋吉がそう言われて、かなり俺の心は舞い上がった。舞い上がるって、こーゆー時使うんだな。一番しっくりくる言葉。


こんなに俺を本気にさせるのはお前だけだぜ。
秋吉。


でも、お前には彼女が居る。
その前に男同士ってゆーのも重要か?
まぁ、それはこの際カンケー無い。そんなの俺が気にして無いから。


なぁ、やっぱ俺お前のこと諦めらんねぇ。


お前に彼女が居るって分かっても、諦めなんかつかねぇよ。


諦めるつもりはさらさら無い。むしろ彼女からお前を奪う覚悟がある。


ホント、俺どうかしちゃってる。

マジ、イカれてる。
俺が。


こーゆーの、『恋』って言うんだろ?


秋吉、


「俺、お前のこと好き」







end.
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