意地ワリィ奴

□放課後
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数学の問題集を取りに来たはずだった。



「いてぇ・・・」

放課後の教室、3年5組。窓の外からは夕日が差し込みカーテンの白さをオレンジ色へと染めていく。時間が刻々と変わるその教室の中心部では、男2人に怪訝な雰囲気が漂っていた。茶色にちかい髪色の男が自分より体格の良い男の上に跨っている異様な光景。

「なんで俺が・・・?!ってな心境ぉ?」
「っテメェ・・・」

俺は今まさに俺を組み敷きながら涼しい顔している男を睨みつけた。

−なんだ、コイツ。いきなり引き倒しやがって。

背中がズキズキと痛む。突然床に叩きつけられた為上手く受け身が取れなかった。

「松井んとこ、好きぃー」
「・・・はあっ!!?」

あっけらかんと同性である自分に愛の告白し楽しそうに目を細めて微笑みかける男を松井は奇妙な目で見た。

−たしか、3組の、宮下・・・・

松井は記憶の端から引っ張り出す様に思い起こす。
思い起こすと言っても、自分と宮下は今まで関わりが無いような気がした。事実、宮下とは違うクラスだし、部活だって違う。俺は弓道部。宮下は・・・

−ああ、コイツ、バスケ部のレギュラー・・・

宮下の顔をかなり整っていて、美形の言葉がしっくり合った。尚且つバスケ部所属。3年生の今、彼はレギュラーだ。
体格は松井の方が一回り程大きかったが、練習で鍛えた体はバスケットプレイヤー独特の細身ながらもしっかりと筋肉が付いていた。
そんな容姿端麗な彼を万年恋人募集中の女子達がほっとくはずがない。バスケ部が使う第2体育館は放課後になると、ホイッスルの音と黄色い歓声が張り合うかの様に響き渡った。
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