無口な恋
□階段キライ
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竜也とキスしたのが一昨日。だって可愛かったんだもん。
「由貴!おま・・・何故遅刻してこなかった?!」
「はよ」
朝からウザイくらい元気の良い挨拶をしてくる原山。
アンタねぇ俺だって遅刻しない時だってあるよ。
つか今物思いに耽ってるんだけど。話しかけてくんな。
あー・・・昨日は全く竜也に会わなかった。つかアイツ学校来てたの?
今日は来てる?
んーじゃ、探索開始。
今から1時限目が始まろうとしているが、俺は迷わず教室を出る。
「え、ちょ!授業出ないの?」
「要らない」
「いやいや、テスト近いッスよー」
数学、授業でテスト範囲終わって無いよー。って原山が叫んでる、と思う。
数学なんて公式覚えれば出来るし。
さーてーとー。
先ずは屋上。定番じゃん?
他の教室では先生が出席を取っていた。そんなのに構わずに俺は2学年の廊下を突っ切って屋上へと向かう。
***
ガンッ
鍵が壊れている屋上へと続くドアを足蹴にして開ける。こんなの日常にちじょー。
朝のひんやりした空気が鼻の奥をツンとさせた。辺りを見回すと・・・
そこには竜也が、
いない。
現実そんなに上手くいきません。
・・・あーもーマジどこですか?
ここ以外心当たりがない。っと言うか一昨日出会ったばかりなんで、なんとも言えないが・・・。
「オイ、オメェ」
誰よ?
そこには・・・
竜也じゃない奴。
あれだよ、アイツ、ゴリラの林田くん。一昨日に竜也を殴って俺に投げられた奴。説明完璧。
「オメェに投げられて肩痛めたんだぞ」
へぇ
「A組のお利口ちゃんはテストに向けて勉強だけしてればいんだよッ!」
ふーん
「ったくよーアイツはあそこで縮こまってやがるし。こっちが絡んでやっても黙ってばっかからよー」
・・・んー
「竜也がどこだって?」
「あーあそこだよ、ほら、アイツは・・・パソコン室に」
まさかのパソコン室。
こっから行くなら・・・校長室前通ったら早いか?
「サンキュ」
「あ?いや、」
林田の横を通り、来た道を戻る。つか屋上の管理って誰やってんのさ。鍵壊れてるよ。今なら自首しちゃう、犯人俺。
「って待てよッ!!」
後ろでゴリラのツッコミが聞こえるけど、聞こえないフリなんかしちゃったりして。
林田もカワイソーな奴だな。喧嘩するだけしか脳が無いなんてねぇ。
あ、校長室前通過。
この階段上ればパソコン室。
一段一段上る。途中で滑り止めのゴムが剥げている所があり上履きに引っ掛かる。思わず舌打ちしてしまい、音が反響した。
ん、ここまで来たら俺完全にストーカーの域。
面白くないのと楽しいのだったら、誰だって後者選ぶだろ。授業と竜也だったらね、そりゃあ・・・
「由貴っ!!」
ん?
階段を上りきる前に踊場にいるアイツとバッチリ目が合った。
竜也と。
俺のお目当てはちょうどパソコン室から出て来たところだった。
竜也は俺を見るなり驚きの表情を見せたが、すぐに顔を真っ赤にし俯く。器用な奴。
「竜也、」
「な、な・・・」
な?ナス?・・・なわけ。
「なんで居んだよッ馬鹿ァ!!」
竜也は俺にそう叫ぶとクルリと回れ右し走って逃げていった。最後の一言は余計だろ。
ま、逃げられたら追うよね。あー・・・走るのは嫌。
俺は上りかけた階段を踵を返し、下った。今度は校長室とは反対方向の職員室へと歩く。