無口な恋

□学校には行く
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キーンコーンカーンコー

あー、1時限目始まったか。
俺、今下駄箱よ?完璧遅刻。
・・・だる。屋上行こ。


職員室前の廊下を通ると先生がいたので軽く会釈しとく。先生も授業をサボっている俺を咎めず、「おはよう」と返す。

あのセンセー誰?不審者?

そのまま目的地へと向かう。
正解は英語科の益田先生だったり、したりしなかったり。


***


ガンッドカッ
両手はズボンのポケットに入れたまま右足で屋上へ繋がるドアを開けた。

「い、ったぁぁ!」

何、うるさ。

目の前には青い空。下を見ると、うずくまっている
・・・・・猿。

「っテメェ!何しやがんだ!」

あー、しゃべった。人間だ。

人間A(仮)は額を手で押さえながら俺を下から睨みつけた。
どうやら俺が開けたドアがソイツのでこにヒットしたらしい。

で、気の毒なソイツは見るからに不良。
今時オールバックって、アンタ。朝のセット大変じゃ?毎日ご苦労様。

「答えろッ!」

勢い良く立ち上がって、怒鳴る人間A 。・・・言いにく。名乗ってくれよ。
あ、俺より背ぇ小さい。

ん?あー答えりゃイんだろ、はいはい。

「ドア開けた」

カッチーン的な顔をする人間A。分かりやす。

「オレはそんな事訊いてんじゃねぇッ!しかも無表情で答えやがって!コロすぞ!」

あらら、最近の若者ってすぐに物騒な事を。俺も若いけど。無表情なのはほっとけ。

つか、この状況疲れた。眠い。

「どけ」
「え?ちょっ、オイ!テメェ」

あーだこーだ騒ぐ人間Aを無視して、屋上の奥へと歩いた。

あー、風が・・・・チッ、まださみィわ。朝だからなぁー仕方ない。寝よ。

「待てよッコラァ!」

俺は壁を背に座り、付いてきたウルサい奴に目をやった。ソイツは俺の目の前に立ったので影が顔にかぶる。

「テメェ、人に痛い思いさせといて謝らないのかよッ馬鹿!」

あ、そっか。悪いのは俺か。じゃあ謝罪する、前に

「アンタ名前は?」
「は?え、ああ、オレは荒井、た、竜也・・・だ」

突然名前を尋ねられアライタツヤは焦った表情を見せる。

「タツヤ、俺が悪かったよ。ごめん」

どう?謝ったよ俺。珍し。抑揚ない口調で悪いんだけど。



・・・・・・・。



ん?
無反応?

下から覗く様に竜也を見上げれば、茹でダコに似た赤い顔が見えた。

なにゆえ赤面か?

「バッ、カヤロー!テメェ見たいな色男が真面目に謝んじゃねェよッ!」

竜也は顔を真っ赤にしながら上から叫ぶ。

いやいや、謝罪要求したのはアンタだろーが。てか、色男って・・・誉めてんのか?そりゃあどうも。

顔の色味はそのままで竜也は聞こえるか否かの声を発した。

「て、て、」

手?おてて?

「テメェは、な、名前何つーだッ!!」

テメェの「て」かよ。

「あー・・・神津」
「し、下も言えよッ!!」
「由貴」
「コウズヨシキ・・・そうか。じゃあなッ」

はい、さよーなら。

竜也はクルリと踵を返し、まるで逃げるかのように屋上から出て行ってしまった。

あの子はちゃんと俺の謝罪を受け止めてくれたかしら。ま、いっか。

♪〜♪♪アーメェジィグレース♪

スラックスの左ポケットから着信音が。ついでに言うなら『アメイジング・グレイス』よ。

んー?原山だ。
あ、次の世界史は絶対出なきゃなのね。
あーー・・・嫌。
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