作品集

□爆弾発言で暴露する
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【爆弾発言で暴露する】

今日俺の家で幼なじみがとんでもない事を言い出した。

―おい、待て。

まずは一旦PSPを置こう。

「お前、自分で何言ってんか分かってんのか?」
「うん、まぁ」
「じゃあお前・・・ホモなんだって?」
「出来ればゲイって言ってくれたら聞こえが良いな」

ホモもゲイも、俺にとって同じ。確かなのは「男好き」ってことだろ。

「で、何?まさか俺が好きだとか?」

とか、ほざいてみる。

「まさか。違うよ」

・・・ああ、そう。

「え?好きって言った方が良かった?」
「っんなワケあるか!」

引っ掴んだテッシュボックスを思いっ切り投げたが、アイツは上手く避けやがった。

「クソ!こんな話止めだ止め!ほら、狩りに行くぞ」
「お前が先に狩りの手止めたじゃん」
「そもそもお前が変な事言ったからだろ?!」
「変なことぉ?」

はて、と小首を傾げる仕草をしてみせる。お前いつもそんなことしないだろ!キモイわ!

「『俺、女より男がいい』っていきなり言いやがって!しかもフツーに!」

アイツは何の会話も無かった合間に暴露しやがったんだ。いつも通りの呑気な口調で。

「そんな軽々しく言いやがって!」
「軽くなんかねぇよ。カミングアウトって勇気要るんだよ」
「・・・・」

アイツの口調と空気が変わった。シリアス的な何かだ。

「これ言ったの、お前にだけだからね」
「俺、?」

俺にだけ?

「お、親とかには?」

間抜けな俺の言葉にアイツは声を立てて笑い出した。震える手でゲームを中断する。

「なッなんだよ!!?」
「それ本気で言ってんの?冗談無しに?親にだって?」
「あ、ああ!」

半ばムキなって肯定すればとうとうアイツは笑い転げた。腹を抱えて笑うってこーゆのだな。
アイツは一通り笑い終えて、

「ばーか」
「な、」

―なんだと?!

「親になんか言えるわけ無いだろぉが。息子がゲイなんて親不孝な話だろ、世間一般的に」
「そ、そんな事・・・」
「あるよ。親にカミングアウトするのはリスクが大きい」

もはや狩りなんかしてる時じゃない気がした。PSPを操作する手が止まった。

「おい、何してんだよ。モンスター倒しに行くんだろ?」

急かす様に体を揺すぶられ、視界が歪む。違う、視界が歪むのはそのせいじゃない。

「おい、お前・・・」

泣いた。何だが分からないが泣けてきた。

「何でお前が泣くんだよ」
「分かんねぇ」
「同情か?」
「ンなもんねぇよ」
「なら、どうして泣いてんだよ」

分かんねぇ。分かんねぇんだよ。
グズグズと鼻水も出てきた。

「ほら、鼻かめよ」

さっき俺が投げ飛ばしたティッシュのご登場。涙は出るし、鼻水は出るし、今のホント俺カッコ悪い。

「ありがと」

感謝された。アイツの口からその言葉を聞くのは何年ぶり?

「別にお前の為に泣いたんじゃねぇよ」

あからさまな嘘と強がりだった。俺のそれを分かってるアイツな笑った。

「キスしてい?」
「ふざけんな。なに言っ、」

ちゅッ

―は?

おい。待てよ。コイツ俺に何した?キス?

「ッテメェ!」
「舌入れる?」
「殴んぞッ!!」
「それは勘弁〜」

アイツはひらりと俺の拳をかわす。憎たらしい!潔く殴られとけよ!

―てか、

「お前好きな奴居るんじゃねぇのかよ?!」
「いや、まだ。フリーよ?」
「クソっ!」

あーもー何だコイツ。何故俺がイライラしなくちゃいけねぇんだよ!

「ちょっと興味出た」
「あ?」
「お前んとこ好きになりそう」

にこっと笑うアイツの頬目掛けて拳を振り上げたが、やっぱり当たらない。アイツが上手くかわしやがる。

「泣き顔がグッときた」
「っ・・・わ、忘れろ!そんなもん!」
「無理。さっき見たばっかだし、」
「やめろ!」

手近にあったありったけの物をアイツに投げてやった。
クッション、座布団、ティッシュボックス、リモコン・・・。

「しかも俺の為に涙流してくれるなんて、」

弾切れ。

―クソ!他に何か投げるもんは無いのか!

アイツを黙らせたい!
が、さすがにPSPは投げるのは気が引ける。

「可愛い」

今度はご丁寧に目も細めて笑いやがる。

―こ、

「この野郎!!」
「わ!それは投げんなって!壊れる!」

激怒した俺はとうとうPSPをアイツに向かって投げてしまった。ちょ、ちゃんと受け取れよ!?

「・・・せ、セーフ」





end.
 

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