作品集
□一樹くんの献血
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【ピアス番外編[献血]】
学校帰り。
『献血お願いします!』と書かれた旗がひらり。俺の目に止まった。
「けん、けつ・・・」
旗の向こうに見える献血カー。真っ白車体に赤十字のマーク。白と赤。
ドクン。
献血は今までやった事が無い。でも、あれだろ?血を採るんだろ?
―ってことは、だ。
針を腕かどっかに刺すんだよな・・・?
―金属が皮膚を通る。
ドクン。急に速くなる心拍。血が全身に通うのが分かる。興奮状態だ。
興味津々で献血カーへと足を伸ばす。が、
―・・・・・。
見た目が完全『不良』な俺が献血って、どうよ?引かれるしない?
―誰も居ねぇよな・・・。
見知った奴が居ないか左右前後を確認して、
いざ献血!
「君、献血するの?」
不良な俺に不信感を抱いて無いらしい。優しそうなおばちゃんだ。ありがたい。
「ありがとねぇ。でも、君今いくつ?」
まるで幼児に歳を聞くような口調。ちょっと恥ずかしい。
「15ですけど、」
高1の15歳。誕生日は再来月。
「あらまぁ」
「え・・・何か?」
とてつもなく残念な顔をするおばちゃん。
何、何、何?!
「献血は16からなのよね〜」
ガーーーン!
そんな、馬鹿な!
「誕生日再来月なんスけど・・・!?」
「じゃ、再来月また来てちょうだいね」
そう言って、おばちゃんはニコッと微笑んでくれた。
***
一年の職員室。観月はデスクで何やらキーボード打っている。俺は窓際で丸椅子に座りながら、献血での撃沈話を聞かせてやった。
「結局献血は出来なかったのか?」
「・・・・ああ」
ガックリと肩を落とす俺に、観月がキーボードを打つ手を止め、いきなりスーツの上着を脱いだ。
「今、ストリップされても嬉しくない・・・」
―!!!!
観月が右腕のYシャツ袖を捲って、そこに見えた物。
1センチ四方の正方形で、白くて絆創膏みたいなアレが、今まさに観月の右腕関節部分にある。
「え、それ、まさか、」
―オイ、嘘だろ・・・?
観月がニヤリと笑った気がした。本当に笑ったか分からないが、多分笑った!
「先日、献血した」
ガーーーン!!!!!!
何だよっそれ!!??
俺が反応を示したのを確かめると、すぐに観月は袖を下ろした。
そして、ちらりと俺の顔を伺うや否や、
「再来月、な?」
―クソォォぉぉッ!!
ゼッテェ再来月行ってやろうじゃねえか!!
「高野、お前誕生日いつなんだ?」
「・・・・・・再来月の末日」
end.