作品集

□勉強が嫌。特に英語。
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【キンキョリ2】勉強が嫌。特に英語。


―どうしよう・・・マジで分かんない。

机の上には『English』と書かれた問題集と真っ白なノート。勉強をする為シャーペンを手にして早1時間半。未だ全く問題が解けない。1問も。
過去分詞と不定詞が意味分からん!テストは明明後日だってのに・・・。

「ア゙ー!」

無意味に叫んでしまったが誰も何事かと駆け込んできてはくれない。う、ちょっとさみしい・・・。

「英語なー、何だよなー、これ!」

寂しさと怒りが混じって、ガンッとシャーペンを叩きつけてしまった。ヤバッ!芯折れちゃったかも。


〜♪♪〜〜♪〜♪


―え?電話?

すかさず携帯に手を伸ばして画面を見ると、そこには親友の名が。

「はい、龍治?」
『宗太、テスト範囲どこだか教えろ』

なんと、まぁ・・・横暴。

「・・・テスト火曜」
『だから、こうしてお前に訊いてんだろ?まずは1日目の教科』
「あー!はいはい!英語はsection3から・・・」

俺がテスト範囲の書かれたプリントを読み上げている中、龍治は煙草を吸っているらしい。電話越しで大きく息を吐く音がする。俺ら未成年のはずなんだけど・・・。

「世界史は教科書127ページまで。戦争とその条約が重要」
『・・・・』
「聞いてるッ?」
『ああ、』

メモしてないなコイツ!てか、覚える気もないなっ!?

「龍治、勉強してる?」
『いや。まぁ、なんとかなるだろ』
「っ・・・・頭良い奴は良いよなぁ。あー、勉強なんかキラーイ」

優しい慰めの言葉を求めたつもりで愚痴ってみたものの、返ってきた言葉は、

『なら遊べば?』

―こ、この野郎!

しかも追い討ちの様に、

『小学生はお外で遊んでた方がいんじゃないか?』
「龍治っ!」

思わず叫んでしまったが、龍治は喉を鳴らし笑っているだけだ。電話越しでからかわれるなんて最悪なんですけど。
いーや、切っちゃお切っちゃお。あちらの用件も済んだところだし、俺は通話を切ってしまおうと電源ボタンに親指を置いた。


『宗太、英語教えてやろうか?』


ブチッ










―れ?

あれ・・・最後の最後に、龍治なんて言った?

俺に『英語を教えてくれる』って?


・・・・・・。







!!!?


「あ゙ぁ゙ーーー!」

一気に出た冷や汗を拭いながら早々と龍治の携帯番号に掛け直した。


プルプルプル・・・

「・・・・」

ブッ

「あ!龍治、」
『auお留守番電話サービスです』
「・・・・・」

ブチッ






も、も、

―もうダメだぁぁぁ!死んだ俺!龍治に殺されはしないが、多分シカトされる!

シカトの3文字が頭の中を行ったり来たり。ぐるぐる回っている。
龍治にシカトされるなんて、ヤダ!絶対ヤダ!!ちょっと傲慢で横暴で非道で冷酷で嫌みなほどイイ男で、言わば俺様な奴だけどさ!!
いや、むしろイイ男ってのが縁切りたくないポイントかも・・・。人間やっぱし顔なんかねぇ。


じ ゃ な く て ッ。


どうしよ。どうする?龍治の家なんか我が家の真ん前よ?謝罪会見しに行きます俺?え?

善は急げと言うか、改善策がそれしか思い浮かばないので、すぐさま出掛ける用意をした。
龍治の家は我が家の向かい。片道1分もかからない。大丈夫、今からでも遅くない。
でも、行ったとして龍治が部屋に入れてくれないかもしれない・・・。だって掛け直した電話に出てくれなかったし。

―それにそれに、

思考はネガティブな回路に繋がれ、駆け出そうと踏み出した右足がその場で固まる。
どうしよう、いやホントどうしよう。


コンコン


どうしよう・・・。部屋に入れてもらえなかったらドアの前で土下座とか?10分に一度は謝罪メール送信?ストーカーか俺はっ!


コンコン ゴンッ


「へ?」

今気付いた。どうやら部屋のドアの向こうに誰かいる。3回目の鈍い音は拳でノックしたらしい。
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