作品集
□この男、危険性大
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【キンキョリ】龍治×宗太
「龍治ーりゅうじー」
ダダダ・・・
俺は勢い良く階段を駆け上る。一番上の段を踏み外すかと思った。
部屋のドアを開ければお目当ての人がベッドに寝ころんでいた。
「・・・宗太、」
龍治は部屋に入ってきた俺を一瞥し、すぐに読んでいた雑誌に目を移す。
「龍治ぃ・・・」
傷ついたぞ俺!ちょっとは構ってくれたって良いじゃないかッ!
そりゃあ、俺が一方的に遊びに来てるんだけど・・・。
龍治は俺の家の向かいに住んでる家の長男。いちお俺も長男。同い年だからいっぱい遊んだ。・・・小さい頃の話だけど。
中2辺りから全く遊んでない。というか、遊んでくれない。冷たくなったというか何というか。
−1人だけ大人びてさぁ・・・。
男子というのは成長期にあれだけ変化するのか。龍治は190cm近く背が伸び、ボクシングクラブに入っていたから自然と体に筋肉を纏っていた。顔は憎らしいぐらい整っていて・・・イケメン通り越してハンサムだな、うん。この前モデルの仕事にスカウトされたって聞いたし。今でさえ寝転ぶ姿がモデルみたい。
「なぁ、」
俺はベットの端に座り、龍治に話し掛ける。龍治は仰向けで雑誌を読んでいるので、綺麗な顔は見えず栗色の髪しか見えない。
俺は龍治のこの茶髪が正直嫌いだ。高校入って龍治が髪を染めたのは驚いた。似合ってるんだけど・・・似合ってるからこそ・・・。
−俺だけ独り置いてかれたみたい。
ただでさえ童顔の俺の背はついに160cmに届かず成長が止まった。野球部に入って辛い練習も耐えたのに、龍治みたいな筋肉はどうやっても付かなかった。
俺は無言の龍治のガタイの良い体を羨ましそうに見る。
−それに・・・それに、
龍治はいつの間にか男になっていた。そう、童貞じゃないってこと。モテる龍治がカノジョいないわけないとは思ってたけど、経験まであるとは・・・。
「宗太、今日は何の用だ」
「えっ?!」
ようやく雑誌から目を離した龍治の言葉に俺はハッとした。
何しに来たと言われましても・・・
「龍治、遊ぼ」
「ヤダ」
「な、何で?」
唐突の返答に俺は聞き返す。それに対して龍治は溜め息混じりに答えた。
「お前な、高3にもなって男2人が遊んで楽しいのか?あ?」
「うっ・・・」
「まぁ宗太は小学生みたいだから良いけどさ」
カッチーン。
な、何だとぉ?!
それはヒドいんじゃないのか!人が気にしていることを・・・。
「俺だって好きでこんなチビなんじゃないッ」
「俺はチビなんて言ってないだろ」
「似たようなこと言って、わっ!」
いきなり龍治の長い腕が俺の腰を掴み、俺はベットの壁側へと追いやられてしまった。龍治と向かい合わせになって、少し緊張感を覚えた。
「あー、はいはい。赤ちゃんはオネンネしましょうねー」
「あ、赤ちゃん!?お前言って良いことと悪い、うぶっ!」
視界が一気に真っ暗。龍治が俺の背中に腕を回してきて、俺は龍治の胸に顔を埋める形となった。どうやら龍治は眠くなった様。
−だからって俺も・・!
「むぐ、離ッ、りゅうぅ」
「俺だけでも狭いベッドなんだからお前は自重しろ」
「むう、」
息が苦しい。酸素を取り込もうと思いっ切り吸うと、甘い香りが鼻をつつく。
「龍治、こっ香水、」
「ああ、付けてるよ」
上から素っ気ない返事が帰ってくる。香水ね、それだよ、それ。そーゆのが俺を孤独にすんだよ。知らず知らずに大人になっている龍治に、俺は少なからずも嫉妬した。
「宗太・・・人間カイロだな。温い」
「お前ッもがッ」
ついに俺は赤ちゃんからカイロへ格下げ。反論しようと俺が口を開くと、龍治は腕の力を強め自分の胸へ俺を埋める。
く、苦しい・・・マジで。
−ん?龍治、手が・・・!
龍治の手が服の中に入ってきた。俺の背中に大きい手が当たる。