読み物・文 ―短編ばかり♪―

□ふたりぽっち
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墓標として十字に縛られた木の杭がふたつと、あなたの側にはあなたの大切な首斬り包丁が突き立てられ、ボクの側の墓標には、土の中に降ろされる時外された帯が巻かれています。

丘の上の大きな桜の木の下に、細やかだけどとても素敵なお墓がふたつできました。

金色の髪の少年達は丘を降り、国へ帰ろうとしています。
お墓を作ってくれてありがとうと伝えたかったのですが、それは叶いませんでした。



それからは、あなたとボクはずっとふたりきりでしたね。

何度か、瞳に強い意志を持った小さな少年とお爺さんがボク達の様子を見に来ましたが、それもほんの数回でした。

きっと変わらずに寄り添うボク達を見て、安心したのでしょう。



季節がうつろい、ボク達はゆっくり、とてもゆっくり蕩(とろ)けていきました。

重なり合った手などは蕩けてひとつになりました。

ボクはそれが本当に嬉しくて笑っていたことにあなたは気付いていましたね。



また、あの日のように季節外れの雪がちらつく寒い日になりました。

相変わらずボク達はずっとふたり寄り添い蕩けています。
手だけじゃなく、もう体中がひとつになっています。

こんな幸せがあるでしょうか。



暖かくなり、また寒くなり、何度も暖かくなり、数え切れないくらい寒くなりました。

金色の髪の少年や、瞳に強い意志を持った少年やお爺さんは、ここにボク達がいるのを、もう忘れているかもしれません。

それでいいのです。

ボク達ふたりの邪魔を、誰にもしてほしくありませんから。



また暖かくなり、何度も寒くなり、数え切れないくらい暖かくなり、またあの日のように季節外れの雪がちらつく寒い日になりました。

風雨に晒されたお墓はだいぶ弱々しくなっていますが、相変わらず十字の形を保っています。
首斬り包丁は錆び付いてはいますが、力強く地面に突き刺さっていて、ボクの帯も掠れて切れそうですが、なんとかお墓に巻き付いています。

変わらずあなたと一緒にいることが幸せでなりません。



この丘からの眺めは、ボク達の国の丘からの眺めと似ていませんか?

たくさんの小さな家でたくさんの人々が暮らし、生きているのを見渡せるのです。

こんな辺ぴな所じゃなかったと、あなたは笑うかもしれませんね。

でもボクは、この丘からの眺めが気に入っているのです。
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