読み物・文 ―短編ばかり♪―

□静かな午後
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桜の季節

ボク達は数日、小さな町の小さな小屋に身をひそめる事ができた

暖かなある日
桜を見に行きたかったけど

「休める時にゆっくり休んでおけ」

と再不斬さんが言った

今朝は少しゆっくり起きて遅い朝ご飯を食べ、今

再不斬さんは窓辺にもたれて巻き物を読んでいる

背中に暖かな陽射しを浴びながら集中して読んでいる

とても静か

時々、小鳥のさえずりやおもてをいく子供の燥ぐ声が聞こえる

それから、再不斬さんが巻き物を手繰る音が

スッ ススッ

ボクはお湯を沸かしながら、静かな再不斬さんの横顔を眺める


午後の光にふんわり縁取られた短い髪

しっかりした鼻筋

ぎゅっと結ばれた口元

大きな肩

巻き物を持つ太くゴツゴツした指

再不斬さんとボクの
静かな静かな午後


しゅうしゅうと薬缶がお湯が沸いたのを知らせた

再不斬さんの邪魔をしてはいけないと、ボクは慌てて火をとめる

それから、二人分のお茶をいれる

静かに静かに


お茶がはいったけど、再不斬さんの邪魔をしたくなくて声が掛けられない

でも、早くしないとお茶が冷めちゃうし

どうしよう

再不斬さんが体をゆすって大きく息をはいた

「再不斬さん、お茶がはいりましたよ」

巻き物を離れ、ボクに向けられる再不斬さんの優しい目

「あぁ」

それからボク達は
並んで座布団に座り

並んでお茶を飲み

並んで暖かな午後を過ごした


静かに静かに…

     …おわり…

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