音を纏って
□3.仮説
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「おぉ!そなたは!!…目を覚まされたのか!」
目覚めた少女をみた幸村はまずそう言った。
勿論幸村もこの少女の事情も知っていたし一度見舞いでもして様子をみていたらしく、目を覚ました事にやはり驚いているようだ。
「よくぞあの怪我で………大丈夫なのか?」
「いや…、それがさ」
どうせ応えられないであろう少女の変わりに佐助が答えようとしたのだが――
「いででででででッ!!」
意識を幸村に向けていた佐助の隙をついての少女の報復により喋れなくなった。
「あひぇ!いひゃいっへば!!」
片頬を思い切り引っ張られている。
暫く眠っていて彼女の体力が落ち、握力も控えめになっていたのは幸いか。
しかしそれでも、
「佐助の頬が餅のようでごさるな…」
という具合だった。
そして佐助はこの少女を両手で支えている彼女の傷への寛大な配慮をしている状況で、抵抗ができない。手放さないという一点においては紳士的、見事な自己犠牲ぶりだった。
「だぁんあ!のんひあこふぉひっへないれ、はすへてってぁでででで!」
「いや、楽しそうで何よりだな」
「ひょッ!!じょうひぁん!」
「あははははは!!まことにひょうきんな面をしておるぞ!佐助!!」
「だぁんぁああああ!!」
…報復に抱腹。冗談だ、と未だに腹を抱え笑いながらこちらへ近づいてくる幸村。
心なしか足取りが遅い。
(旦那、絶対わざとゆっくり歩いてるでしょ!!)
そう突っ込みたいところだか今の佐助では上手く喋れない。
やがて自分達の傍までやってきた幸村は少女に視線を向けた。
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