バーボン
□罪と咎とで手軽な殺人
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「………」
王さまとは違って、女王さまは目敏いようだ。
「この間のことも含めて、兄さんに言いつけるわ」
「それは、困るなあ」
「クラリス。俺が聞いてる前でそういう話をしないでくれ」
「あら、大丈夫よ。クレイはだれかさんとは違って誠実だし、口も固いもの」
着いたわ、とクラリスが足を止める。かなりの高さを持つ、ビジネスホテルだった。
「わたしやお客さんは入れるけど、あなたたちはたぶん、部屋には家主の『許可』がないと入れないわ。もしヴィンセントがいれるのを拒否したら、大人しく帰ってね」
「はい」
エントランスに入ると、直ぐ様男がかけてきた。
「クラリス。いらっしゃい、待っていたよ」
部屋へ、と優しく言うヴィンセントに、クラリスは首をふる。
「兄さんがどうしてもと言うから、アリスからふたり連れてきてしまったの。入れてもいいかしら」
「…………わかった、いいよ」
しぶしぶというふうに、ヴィンセントが言う。