バーボン

□罪と咎とで手軽な殺人
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「メアリー・ピュアンスのオーダーメイドよ」

アレイストの視線を受けて、クラリスがそう答える。女性向けブランドのなかでもかなり上のランクに位置するブランドの名だった。

「毎年、誕生日にはドレスと花束をくれるの」
「そう言えば2月でしたね、お誕生日」
「ええ」
「すみません、なにも贈らなくて」
「いいわ、お返しするのだって大変だし」
「クレイドル、君はなにかあげたんですか?」
「クレイは万年筆をくれたわ」

クラリスはこの間のお茶会での態度が嘘のように、アレイストに普通に接してくる。けれど必要以上近づこうとはせず、クレイドルを間に入れて微妙な距離を保っていた。

「よろしければ、なにか贈りましょうか」
「いらないわ。どうしてもと言うのなら、ひとつだけお願いを聞いて」
「なんでしょう?」
「ケイトとあれきりにすると約束して。次にああいうことをしたら、たとえ合意の上であろうと許さない」
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