バーボン
□月に隠れて手軽な殺人
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「それはやっぱり、目のことで?」
すう、と猫のように、クラリスの瞳が細まる。
「みんなおしゃべりね。でも、ヴィンセントは自分からくれたのよ?」
「ええ、知っています。自分で右目を抉ったんですよね」
「わたしが、求愛してくる男には右目をねだるというのをどこかで聞いたのね。わたしの目の前で右目をえぐって、愛してくれと懇願してきた」
「それで、どうしたんです」
「……軽蔑されたくないから、言わない」
強く出れない、というあたり、この女王さまはきっと臣下に憐れみをかけたに違いない。
「私がここで右目をえぐって献上したらどうします?」
「治療するわ」
「愛してはくれないんですね」
「あの頃は病んでたのよ。ちょっとどうかしてたの」「じゃあ、ヴィンセントという男のことはどう思っているんです?」
「……そうね」
クラリスは自分の頭に指をあてた。
「ここと」