バーボン
□月に隠れて手軽な殺人
2ページ/10ページ
クリストフはなんだそんなことか、と言わんばかりに興味なさげな顔をした。
「簡単ですよ。僕と同じ匂いがする」
「匂い?」
「あなたをどうにかしてやりたくてたまらない、危険な香りですよ」
悔い改めよ。
「体の調子はいかがです?」
アレイストは来るなりそう言って、クラリスの顔色を確かめた。
あれから数日して、クラリスがだいぶ回復したという話を聞いて見舞いに来たのだ。最も、クラリスに家に来ることは断固拒否され、こうして自宅近くの喫茶店にいるわけだが。
「すっかり……というわけにはいかないけれど、だいぶ良くなったわ」
「そうですか、良かった」
「あなたにはお礼を言わないと。血をわけてくれて、ありがとう。それと、主人が失礼なことを言ったみたいで…、」
「ああ、べつに気にしてませんよ。私もあなたのように魅力的な奥さんがいたら、ピリピリするでしょうから」