バーボン
□燃やしつくして手軽な殺人
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死に至る病とは絶望のことである。
キュルゲゴール 『死に至る病』
「そんな目で見ないでくれませんかね」
結婚して丸くなったと聞いていた。クラリスが結婚して以来、一度も会っていなかったのだが、丸くなったというよりも諦めがはやくなっただけだろう。
クラリスは剣を振りかざして迫ってくる。あの量の毒でなおも動けることにエリオスは感心したが、しかし無謀と言わざるを得なかった。
簡単にかわされてしまい、クラリスは霞む視界をなんとかクリアにしようとする。
肉薄して剣を振れば、それは弾かれて宙を舞った。かまわずにそのまま、足を使って攻撃する。エリオスの腕を強打して、エリオスは剣を落とした。
それを拾い上げ、クラリスは躊躇いもせずエリオスに突き刺す。
「……!!」
「解毒剤を出して。でないと、あなたも死ぬわよ」
「クラ、リス。君は、ほんとうに……」
変わっていない。
こういうところも、その力も。