バーボン

□燃やしつくして手軽な殺人
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女王になるなどとクラリスが口にしないことはわかっていた。クラリスにとってアップルはただ、嫌な思い出のある場所でしかない。
でも、それでも、クラリスに頼らずにはいられなかったのだ。どんな手を使おうとも、クラリスの力を得るためならばと――

「参りました、ね…」

内ポケットから、小瓶を取り出す。クラリスにそれを渡して、エリオスはずるずると座りこんだ。

「クラリス、平気?」
「大丈夫よケイト。そんなに深く入っていないから」

だらだらと、流れる血に説得力はない。

「ヴィンセント。今日のところはエリオスを連れて帰って。あなたたちの気持ちはわかったから……考え直すだけなら、してみる」
「クラリス、」
「でも、女王になりたくないわたしの気持ちもわかってほしいの」
「わかってる。君に頼むのは最後の手段だったんだ」
「……また、今度。次会うときまでに、決めておくわ」
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