小説

□大好き 佐久間さん!2
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陸上部に所属している俺は体力作りの為にマラソンをしながら、必死にサッカーに打ち込む佐久間さんをチラリと眺めた。
真剣なその姿勢が好きだった。
けれどそんな彼女の視線は、みんなに指示を出す司令塔のドレッドヘアの少女に向けられていて。


「佐久間!豪炎寺にパスだ!!」
「はい、鬼道さん!」


その視線が少しでも自分に向けばいいな。
そう思うけれど、とても口になんか出せるわけがなかった。
彼女のおかげで俺は佐久間さんと話すことができるんだから。









部活が終わってから制服に着替えて部室を出ると、そこには佐久間さんが待っていた。
あの日から、毎日こうして俺の部活が終わるのを待っていてくれる。
まるで恋人みたいだ。
そう思ったのは、秘密だけれど。


「宮坂、行くぞ!鬼道さんはまだ部室で着替えてるハズだからな」


楽しそうに俺の腕を引っ張って走る佐久間さん。
可愛い。
本当に、鬼道さんが好きなんだな。


「此処だ!バレないようにこっそり覗けよ」
「いや、だって着替え中なんじゃ……」
「だからバレないようにこっそり覗けよって言ってるだろ」


佐久間さんに促され、仕方なく扉の隙間から部室を覗く。
といってもやっぱり女子の着替えを覗くのは忍びなく、佐久間さんの手前覗くポーズだけ取り、目は瞑る。


「え?」


呆けたような佐久間さんの声に、心配のあまり少しだけ目を開ける。
鬼道さん、すみません。
けれどそこには普段は隠されている鬼道さんの綺麗な下着姿…………なんてなく、未だにユニフォーム姿の鬼道さんと不動さんが居た。
女子と男子は着替える場所が違うハズなのに、なんでだろう。


「鬼道ちゃん、やっぱりンなこと気にしてたのかよ?」
「だ、だってお前が……………」
「俺のせいにすんなって。鬼道ちゃんが貧乳なのは事実じゃん」
「だから俺は努力、しようとだな………………」
「しなくていいっつーの」
「え?」
「鬼道ちゃんはそのまんまで良い。貧乳でも巨乳でも、それが鬼道ちゃんなら真ん中どストライクだっつーの」
「………………バカ////」
「でも、そんなに気になんなら………………………」


不動さんが突然鬼道さんの手を掴み、足に自分の足を掛ける。
鬼道さんが体制を崩したのを良いことに、そのまま相手を


「協力してやってもいいんだぜ…………………?」
「何をするんだ不動!」
「胸ってさ、他人に揉まれると大きくなるらしいぜ?」
「お前は馬鹿かっ/////」


イチャイチャと繰り返される二人の会話を前に、突然ドアが音もなく閉まる。
閉めたのはもちろん、佐久間さんだ。


「佐久間さん!」


走ってその場から逃げ出す佐久間さんを咄嗟に追いかける。
佐久間さんはサッカー部だからか足も速かったが、それでもやっぱり陸上部な俺の方が速い。
すぐに追い付いて、その右手を掴んだ。


「っ……………離せよ、宮坂」
「離しません」
「なん……………で、」
「だって泣いてるじゃないですか、佐久間さん」
「ホントだ、泣いてる、、俺。うわ、情けな…………」


俯いて、目元をゴシゴシと拭う彼女に、なるべく優しく声をかける。


「誰だって、好きな相手のそんな現場を見たら悲しくなります。でもね佐久間さん。俺は、あなたの笑った顔が好きです。あなたは素敵な女性なんですから。だから、お願いですから笑っていてください」








「宮坂、お前案外良い奴なんだな」






そう、顔をあげた佐久間さんが言った。
その顔は俺の大好きな彼女の笑顔だった。


好きです、佐久間さん!
(あなたが誰を好きだとしても)











――――――――――――
もはや宮坂君が誰これ。
そしてなんか宮佐久なつもりが、宮→佐になった。
すまん、友人AよWW
 

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