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□優しいキス
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あいしているだなんてたった6文字の言葉が、形の良い唇から紡がれた事など無かった。今までは。そしてきっとこれからも


ねぇ、私はいつだって茶化しながら貴方にその台詞を求めたけれど。本当は、そんなものどうでも良かった


飽きもせず要求する私に、眉間に皺を寄せながらも決して怒らずに、小さなキスをくれる。それが好きだった
抱き締めた時に伝わる体温、吐息、鼓動


其処に何があるか位、ちゃんと知ってるわ


「ベジータ…」
「何だ」
「好きよ。貴方が好き」
「…フン」


鼻で笑って、相変わらずの無表情
だけれ、私を抱いた手に力が籠もる


引き締まった胸板にぴたりと顔を寄せると、彼の片腕が私の頭に添えられた
戦って傷付けて、その分だけ傷ついてきた掌
けれど、丸で壊れ物にでも触れるかの如く、クシャクシャと撫でられると一気に眠気に包まれた


「お休みなさい…ベジータ…」
「ああ」
「大好き…」



口になんてしてくれなくていい
綺麗に飾られた言葉は要らない
だからこのまま離さないで
目覚めた時に側にいて



意識が微睡みに落ちる直前に、羽根が触れるような感触を唇に覚えた



〈fin〉
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