color

□本編
3ページ/22ページ


「緋ってば相変わらずかわいいー」
「離せよ!」
「おにいちゃんって呼んで」
「誰が呼ぶか!!!」


何このでじゃぶ(っていうんだよな)

いきなり抱き着いたと思ったら、わしわしと俺の頭を撫でる兄貴を肘でぐいぐい押しやりながら、かちに助けを求めるアイコンタクトを送る。


「…っ」
「………ふ」
「笑ってんな! 助けろ! 目反らすな!」
「仕方ねぇなぁ…」
「あ、なにすんだよーしょうのくせにー」
「うっせ、かわいこぶんな、ベタベタいい加減にしろ」
「え、勝、やきもち?」
「誰が妬くか気色悪ぃ!!!」


かちが兄貴を引き剥がすと、いつもの様に言い合いを始めた。
このやり取りも変わらねぇな、と聞き流しながら俺には珍しい部屋をキョロキョロ見回した。
本棚には難しそうな本がギッチリで、壁には写真が飾ってある。
あ、あれ兄貴とじいちゃんだ。

部屋を色々みてたら、急にかちが顔を真っ赤にさせて部屋を飛び出していった。
え、これ、やばいんじゃねーの?


「兄貴、何怒らせたの?」
「あ? 聞いてなかったのか、大丈夫だから気にすんな」


後で謝るからと楽しそうに言われたけど、なんだかんだ兄貴に甘いかちが、兄貴に対して本気でキレるなんて滅多にない。
しかも部屋飛び出す程キレるなんて…後でどうなっても知らねーぞ。こわ。

そんな俺の心配を気にする事なく、兄貴はニコニコと笑っていた。


「あ、それよりさ、俺かちと一緒に学園長に会いに来たんだよね」
「うん知ってる」
「学園長は?」
「ここ」
「………は?」


部屋をいくら見渡しても、この部屋には俺と兄貴しかいない。
遂に頭、いっちゃったか…
残念そうな目で見詰めてやると、兄貴はきょとんとした目で俺を見詰めた。


「あれ、教えてなかったっけ?」
「なにが」
「ここの学園長、俺」
「いや嘘だろ?」
「お前…ちょっとは兄を信用しろよ」


詳しく話を聞くと、兄貴は本当にこの学園の学園長だったらしい…
しかも3年も前から!
全然知らなかった!
ポカンと兄貴を見つめていると、これからよろしくと頭を撫でられた。



うぅーん…
兄貴の事嫌いじゃねぇんだけど、むしろカッコイイし、頼りになるんだけど…

俺のこと構いすぎだし、可愛い可愛い言うし、さっきみたいに抱き着くとか学校でされたらって思うとちょっと不安。
だって小学校の頃は、歳が離れた兄貴はかっこよくて自慢だったけど、中学にあがる頃に同級生に「お前の兄貴ブラコンだな」ってからかわれたりして

なんか…すげぇ複雑だった…

まぁ10こも歳離れてるし、俺が末っ子だから仕方ないって言ってくれる友達もいたけど、やっぱなんかな。
恥ずかしいような、ムカつくような、でも何にムカついてんのか自分でもわかんなくて、もやもやする。
うーっ

思い出して複雑な顔をしてたら兄貴がそれに気付いたみたいで、さっきより強めに頭を撫でられた。






次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ