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□本編
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どれくらい歩いたんだろ?
寮棟とは反対方向に廊下を歩いて(俺は担がれてるけど)教室棟も通り過ぎて、この時間は人が全然居ない資料棟に来た。
いろんな教科の資料室とか準備室の前を通って、俺を担いでるヤツが止まった。
後ろ向きだから分かんないけど、たぶん突き当たりの部屋に着いたらしい。

生徒カードで鍵を開ける音が聞こえて、そのままドアを通り過ぎた。
どこの部屋なのか分かんないまま、着いたぞって声を掛けられて、でっかいソファーにほうり出された。


「いってぇ…」
「お前、名前は?」
「知りたきゃ自分から言えよっ」


俺がほうり出されたソファーの目の前に座ったソイツは、エラソーに足なんか組んで、俺に名前を聞いてきた。
誰がこんな怪しい奴に名前なんか教えるかっ! コイツだって素直に名乗る訳ないだろ。
そう思ってたのに。


「末永 黒謳(スエナガ クロウ)だ、名乗ったぞ、お前は?」
「あ、新木 緋…です」


さらりと名乗られちゃって、俺も言わなきゃならない空気になってしまった。
なんだなんだ、意外に素直なのか? 末永って奴。
俺の名前を聞いて、何か考え込んでるみたいだけど、知り合い…じゃないよな?
絶対会ったことないって!


「お前あれか、C棟寮長から報告が入ってる」
「え? 真白先輩が?」
「あぁ、庶民で高校に行く当てがなく、情けで入学したっていう」
「…は?」


なにそれ? 俺そんなんじゃないけど…
あ、もしかしてサポートってその報告のことか?
だからたまに頑張れとか言われたのかな。

色んな奴とのやり取りを思い出して、一人で真白先輩の言ってたことを納得してると、末永がジロってコッチをにらんできた。
やべっ俺ちゃんと返事してなかった!
慌てて「そうです」って返事をすると、末永は更に目付きを悪くした。
なんなんだよーっ!


「俺は庶民は好きじゃねぇ」
「はぁ?」
「この学園は幼等部からある進学校だ、そんな所に制服も買えないようなガキを入れるなんざ」
「なっ」


じいちゃんの学園を褒めてくれんのは良いことだけど、庶民が嫌いってなんだよ!
公立にだって良い所いっぱいあんだぞ!
てか別にここ、セレブ校じゃねーし!(たしかに、おぼっちゃんいっぱい通ってるらしいけど)

ムカついて、つい俺も末永を睨み返す。
また生意気だって言われるかと思ったら、いきなりガッシリとあごと肩をつかまれた。
そのまま頭を右に倒されたと思った時、
―がぶっ


「いってぇぇぇえぇえぇぇ!!!」
「…うるせぇよ」


一瞬、電気がビリビリって流れたのかと思った。
いきなりすぎたし自分じゃ見れないから分かんなかったけど、首を噛まれたらしい。じわじわ痛みが強くなってくる。

ビックリして少しうるんだ目をこすって、また末永を睨んでやる。
噛まれた所をそっと触ると、たぶん血は出てないっぽい。でも皮膚がこすれて、ちょっと歯型も付いてる。


「今日の指導はここまでにしてやるよ、早く転校したくなると良いなぁ?」
「…っ誰が転校するか! お前こそサッサと卒業しろバーッカ!」


ムカついて、思いっきり叫んで、そのまま言い逃げした。
廊下を走って走って、今日は走ってばっかりだとか思いながら、とりあえず噛まれた所を見て貰おうと保健室まで走った。






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